File179 ページ12
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「この爆破犯は俺らの因縁の相手だ。
いくら公安サマでも…渡すわけにはいかねーな」
4年前の決着はまだついていない。
再び爆弾が関わってくるのなら、その相手は紛れもない自分達。
必ず決着をつけてやるとあの時誓ったのだ。
そして譲れない理由がもう一つ。
挑戦的な態度を崩さず、萩原の隣に立つ松田は続ける。
「この暗号を送ってきたのが、アイツだって言うんなら尚更だぜ」
2年前に姿を消した大切な存在。
ここまで話を聞かされて、長い間喉から手が出るほど欲しかった手がかりを諦められると思うのか。
「それでもっつーなら…こっちはこっちで勝手に動くまでだ」
「……」
サングラス越しではない松田の瞳から鋭い眼光が放たれる。
張り詰めた空気が漂う中、降谷を見る彼の顔はかつて殴り合ったあの頃に似ていた。
(……まったく…変わらないな…)
警察学校時代に何度も見た表情。
こういった場合、何を言おうが曲がらない性格であることはよく知っている。
しばらくして、降谷はやれやれと肩の力を抜いた。
「…君なら、そう言うと思ったよ」
「つか…本当に公安でしか動けねーなら、わざわざ俺らを呼び出すことなんざしねーだろ」
「班長を呼んだのも…最初から協力してもらうためっしょ?」
「そこまでわかってたか」
試されたのが気に入らないのか、松田は眉を顰め、答え合わせが済んだ萩原はいつもの笑顔へと戻る。
見守っていた伊達と諸伏も、緩んだ雰囲気に安堵した。
「こちらの本命は氷室雄人。爆破犯の方は刑事部に任せるつもりだ」
「いいのか、零」
「人目につく場所では僕たち公安は大きく動けないし…4年前の担当は元々刑事部だからな」
「それだけじゃねーだろ」
未だ1人穏やかではない雰囲気を纏う松田は降谷を見つめたまま。
これだけを伝えるために呼び出したとは思えず、拭えない違和感が残っている。
「零…何を隠してやがる」
睨まれた降谷は再び肩をすくめた。
萩原の洞察力とは異なる松田のこれは、野生の勘みたいなものなのか。
それとも、今回の件に彼女が関わっているからなのか。
もし彼が刑事部にいたのならかなり活躍できるのではないか、なんて頭の隅で考えながら小さく笑う。
「流石だな、松田」
本当に話したかったことはここからだ。
そう続ける降谷は、胸ポケットから一枚の写真を取り出して見せた。
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七草(プロフ) - ふゆりぬさん» ふゆりぬ様はじめまして〜!当作品をご覧いただきありがとうございました…!楽しんでいただけましたら嬉しいです!お言葉に甘えて来年もやらかさせて(?)いただきます…! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - 早桃さん» 早桃様!この度をお付き合いくださり、また数々のコメント本当に嬉しかったです!ありがとうございました! (2022年12月27日 20時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
ふゆりぬ - 鈍色編完結おめでとうございます!!松田くん推しなのでほんとにキュンキュンしながらとっても幸せな時間を過ごさせてもらいました。これで終わらなくてよかった、、じゃんじゃんやらかして下さい!笑これからも応援しています✨ (2022年12月26日 21時) (レス) @page50 id: b50b7f8ace (このIDを非表示/違反報告)
早桃 - 鈍色編完結おめでとうございます!!思いを伝えられてよかった…😭何回もごめんなさい! (2022年12月26日 12時) (レス) @page49 id: f9af42ef58 (このIDを非表示/違反報告)
七草(プロフ) - マシュマロ。さん» コメントありがとうございます!色々回収しました!(語彙力皆無) (2022年12月22日 22時) (レス) id: d39847a71a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:七草 | 作成日時:2022年12月4日 0時