【円盤発売記念】とある日の授業前 ページ5
※警察学校時代
※舞台挨拶のやつ
「うわっ!」
「軸足ブレてる」
合同稽古が始まる前、道場の隅でバランスを崩した諸伏はそのまま尻餅をつく。
彼の技をそばで観察していたAが指摘と共に手を差し伸べ、その様子を遠くから伊達が見つめていた。
「んだアレ」
「諸伏のやつ、回し蹴りができるようになりたいんだと」
「もうすぐ試験だからか」
「ほんと真面目だよなぁ諸伏ちゃん」
道場にやってきた松田は同じ場所に視線を送り、伊達の隣に座っていた萩原も彼らを見ながら頭の後ろで手を組んだ。
「しかもAちゃんからレクチャーなんてさ。俺も混ぜてもらおっかな」
「つか、なんでアイツなんだよ。零はどうした」
降谷もAや伊達と同じくらいの実力者。
その上、諸伏とは親友である彼がいないことに松田は首を傾げた。
「回し蹴りの練習をしたい」という諸伏の頼みなら快く引き受けそうだが、今その彼の相手をしているのは教場が違うA。
2人を見ながら伊達が面白そうに口を開く。
「俺がAに言ったんだよ。中高はよくアルマーダで扉破壊して怒られてたからな」
「ぶはっ!Aちゃんの扉破壊とか見てみたかったぜ」
「カポエイラまで齧ってんのかよアイツ…」
回し蹴りはAの得意技のひとつ。
諸伏の悩みを訊いた時、丁度近くにいた彼女に伊達は声をかけ今に至る。
道場の隅にいる2人について盛り上がる中、ゾロゾロと集まってくる生徒の中から、降谷がこちらにやってきた。
「来たか零」
「みんな早いな」
「オイ、いいのかよアレ」
胡座に頬杖の松田に問われ、降谷は彼らに視線を向ける。
授業前から既に汗だくの幼馴染の表情は明るく、随分と活き活きとしていた。
その隣、束ねられた長い黒髪を揺らしながら微笑んでいる彼女も、普段は見られない顔をしていて。
2人を見つめながら、降谷は形のいい青い瞳を細めて口元に弧を描いた。
「2人とも楽しそうだし、わざわざ邪魔することもないさ」
.
(とか言って…降谷ちゃんちょっとジェラっちゃってる?)
(べ、別にそうじゃない!)
(なるほどねぇ〜…んで、こっちはこっちでモヤってるわけか)
(うるせーよ)
2022.11.09 円盤発売記念
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作者名:七草 | 作成日時:2022年10月31日 21時