2月14日_本庁にて ページ37
大遅刻懺悔
.
「…ん」
差し出されたのはリボンが綺麗に巻かれた四角い箱。
今日がなんの日かを考えれば中身は見なくともわかるが、それよりもはるかに重要なことに松田は眉を顰めた。
最近、少年課が騒いでいるネット犯罪の調査に巻き込まれ、サイタイのエースが寝る間も惜しんで仕事をしているというのは本庁で有名な話だ。
部署は常に明かりがついているにも関わらず、スマホの連絡は最低限しか返ってこない。
自分を呼び出した、今のこの時間もやっと確保したものなのだろう。
嬉しさがないといえば嘘になるが、心配の方が何倍も大きい。
「ば…れん、たいん…」
「それどころじゃねーだろお前」
「…そんなこと…なくもなくもない」
「どっちだ」
ふざける気力は残っているのか。
けれど箱を持つ手は少し震えており、目の下のクマは遠くからでもわかるほど。
疲労を隠し切れていない弱々しい姿が胸を締め付けた。
「ボロボロじゃねーか」
「少年課へのストレスがすごいです」
「無理すんなよ」
「だって…」
1秒でも目を閉じれば寝てしまうのではないか。
そんな細々とした声で、Aは笑った。
「…やっぱり、渡したいし…好きな人には」
「……」
倒置された言葉はあまりにも小さい声だったが、彼女を見つめる松田の耳には確実に届いて、肩の力が一気に抜けた。
愛しい存在にそう言われてしまえば、もう何も言えなくなる。
ため息をつきつつ、差し出されたままだった箱を受け取り、ゆっくりとそのリボンに手をかけた。
「…カカオは…疲労回復に効果的なもんだったか」
「そうらしいね」
箱を開いて現れたのは予想通りのお菓子。
松田はそのうちのひとつを手に取って、まじまじと見つめる。
「じゃあ…これは知ってるか」
受け取った以上、自分がどう食そうと勝手だろう。
Aに視線を移し、意地悪く口角を上げた。
「キスは、ストレス解消に効果的なんだぜ」
「へぇ………………え、？」
仕事の疲労で半分聞き流していたAの声がはっきりとしたものに変わる。
今、彼はなんと言ったのか。
脳内で繰り返すと同時、目の前には持っていたチョコレートを己の口に放り込む松田の姿。
「あ、…」
その1秒か2秒後。
言葉の真意を理解した時には、彼の顔は視界いっぱいに広がって、大きな手は自分の首裏へと回っていた。
×××××××××××
リアルが忙しすぎてアレですが、コナン熱は全く冷めてないです。
本編もちまちま書いております！
続く (更新停止中)
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作者名：七草 | 作成日時：2022年10月31日 21時
