未来へ繋ぐ2 ページ16
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静まり返った空間で大きく息を吐く。
「……ふぅ…」
「…寿命縮むな…コレは…」
「でしょ…?」
カチコチ響く音が大きく聞こえ、冷えた汗がこびりついて気持ち悪い。
第一関門を突破し、諸伏は少し苦笑いを浮かべる。
「それにしても随分とあっさり切るんだな…萩原」
先程の彼はやけにストレートに飛び込んでいった気がした。
緊張感が続く方が苦しいのは確かだが、今はその行為ひとつで命が左右されている。
アクセルを踏み込みすぎて暴走してはいないか。
そう案じる諸伏の言葉に、萩原は困ったように笑った。
「悪いな、諸伏ちゃん…。
実は黄色がフェイクだってことはわかったんだ」
「そうなのか!?」
「問題は赤か青…いきなり2択を迫っても困るだろ?」
本番はここからだ。
そう続ける萩原は残りの2色のコードを見つめ、つられて諸伏も視線を向ける。
赤か、青か。
1つは未来への切符、もう1つは破滅への入り口。
冷えた汗がまた滲み出てくる。
「どうする?色…変えるか?」
「モンティ・ホール問題みたいだな…」
どちらのコードを切るか、選択肢は自由だ。
どちらが正解でどちらがハズレは既に決まっている。
萩原の言う通り、ここまできたら運なのだろう。
諸伏はあまり時間をかけずに小さく首を横に振った。
「…いや、そのまま赤を切ろう」
「……了解…確率的に考えて?」
「…違うよ」
先程の確率論にまつわる問題に則れば、確かに変えない方が可能性は高い。
けれど選択肢を変えない理由はそこではないのだと、今度は諸伏が眉を下げて笑った。
「勝手な理由だけど…青は切りたくないんだ」
黄は縁起がいいとか、赤は赤い糸とか、選ぶ理由は様々だが、諸伏にとっては青こそが信じたい色であった。
連想されるのは、強い信念を持った親友の瞳。
ここで爆弾を止め、自分達が、彼へと繋げなければ。
その願いの線を断ち切らないために。
この上なく自分都合の理由であるが、目の前の彼は受け入れてくれるだろうか。
おそるおそる瞳を合わせれば、心配の念をかき消すような笑みがそこにあった。
「いいねぇ…そうゆうの、超好き」
表情を崩さぬまま爆弾に向き直った萩原は、最後の一手のために使い込まれたペンチを握り直した。
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(諸伏ちゃん…覚悟はいいな?)
(……いつでも)
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作者名:七草 | 作成日時:2022年10月31日 21時