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後少し、後少しだ。そう思った所で、突如首が締まった。
三話「空っぽの中身」 ページ5
「………朝、だ」
この本丸の小さな審神者部屋にも日が差す。ヒトの形を取ってから、初めての朝だった。
昨日の事はよく覚えていない。審神者の話も殆ど覚えていない。ただ一つ覚えているのは、昨日出会った刀の事だけだった。
「…また、会えるかな」
とある春の日の出会いに、もう一度出会えないかと思いを巡らし、そっと呟いて。
結局最後まで出会うことなどなかったのだが。
審神者は既に部屋から消えていた。出陣命令でも下らない限り、ここを出て行って本丸の探索をしても大丈夫そうだ。
そっと扉を開けて、彼は部屋の外に出た。
外に出た途端、気味が悪い怨念に纏わり付かれた気がして、力が抜けたかのようにぺたりと座り込む。
「うっ…。何だろう、この変な感じ……」
審神者から入り込んでくる力か、それとも周りの
とりあえず、邪魔にならないように、目に付かぬように柱の影まで這ってゆく。
何故だかこの広い廊下には誰もいる気配がない。本丸とは、本来賑やかであるべきなのだが。そう考えながらも、少しずつ進んでいく。
後少し、後少しだ。そう思った所で、突如首が締まった。
「ゔ、がはっ……」
身体が宙に浮く。どうやら後ろからマフラーを掴まれたようで、息が出来なくなる。振り解こうにも、僅かな筋力差がある上、地に足がつけない、更には纏わりつく怨念とやらで剥がすことが出来ない。
「…君が新入りかい？少し付き合ってもらうよ」
「は、離し…てっ！」
「…おや、このままでは命が保たないかな。壊れたくないなら暴れない方がいいと思うよ」
柔らかな物言いとは裏腹に、それの腕っぷしは強く、細い腕では何も出来ない。地面に降ろされ、歩けない大和守をずるずると引っ張っていく。
自分が先程までいた部屋がどんどん遠ざかっていくのを、ただ見ることしか出来ない。自分を引っ張っていく彼の方を向いてみたが、白い服と金色の髪が見えただけで、その顔は見えなかった。
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… - 面白そうなお話、評価しときます！ (2019年3月6日 22時) (携帯から) (
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作者名：コトマ | 作成日時：2019年3月1日 17時
