【刀剣乱舞】カミサマチガイ【大和守安定】 (ページ3)

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一話「カミサマとの出会い」ページ3

Aは、泣いていた。
辛くて泣いていたのではない。嬉し泣きだ。
先程この空間にて作られた、青年にしては小さな体を抱きしめながら。
「い、痛い…体が…」などと言う抵抗も虚しく、打刀、大和守安定は暫くその場で動けないままだった。

鍛刀場、二つある内の2番。審神者と彼のみの世界。
「よく戻って来て下さいました！私の…私だけの……」
「え、えっと…？状況が掴めないんだけど」
あどけない少女のように顔を綻ばせている審神者だったが、彼女の目は既に闇だけを見据えていた。彼女の精神は既に破綻していて当然だった。
そんな彼女を目に入れれば当然疑問を抱くし、ここまで好待遇にされるとなんだかモヤモヤして嫌だ、と言う考えを持っているのが大和守という付喪神の初めての感情だった。
「さあさあ、どうぞ此方へ…。仲間への積もる話はありますでしょうが、とりあえずは私の部屋へ…」
「え、えっと…」
困惑する彼の後ろから、新たな声がする。
「主。大和守が困惑している。彼にもう少し整理する時間を用意してやれば良いものを…」
呆れ切ったその声の主は、いつの間にか殆ど誰もいない廊下にもたれ掛かっていた。それは、黒い外套の青年だった。
自分と同じ、付喪神であることは分かる。だが、作られた時代が明らかに違う。彼はなんとなくそう感じていた。
「誰だか知りませんけど、辞めてくれますか？この子と私の時間を邪魔しないで下さい」
「…まあ良い。なるべく早く彼の顔をもう一度見直してみる事を進めておくがな」

そう言って早々と立ち去ろうとして、青年は一度立ち止まる。
「ああ、そこの浅葱色の羽織の…」
「大和守安定。これから宜しく」
「…大和守。命だけは捨てるな。俺からの忠告だ」

今度こそ彼は行ってしまった。残されて呆然とする大和守と、彼に目もくれない審神者。
不思議な組み合わせの出会いが、始まる。