奏 (ページ19)

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18話ページ19

「あの装置、つける意味あんの？」

「……は？」

ボーダー隊員に補導され、ボーダー本部の研究室とやらにきた。別に今回だけではない。何回もある。

「寺島。この子のトリオンを調べろ。」

私の発言がその人の気に触ったのか分からないが余計な事を言ってしまったようだ。

「8．．．副作用(サイドエフェクト)の可能性があります。」

驚きと感嘆の音色……8とはなんの数字なのだろうか。サイドエフェクトとはなんだ……

「涼風普段人と変わったと感じる事はあるか？」

まるでたぬきのような体格をした開発室長さんが私に問いただした。

「人様と完全に同じなんて絶対ないのでずっと変わってると思います。」

「そうでなくてな．．．」

私は人と変わってるところしかない。あだ名は変人。私が変じゃないところなんて全くない。

「例えば．．．人の感情が痛覚になって感じるとか、目で見た人の未来が見えるなどな。あとは嘘がわかるなどだな。」

開発室長が言ったその超人的な能力かどどこにも心当たりがあるわけがない。
別にそんな超人的な能力、現実世界に存在する訳がないのだ。ましては私に限ってあるはずがない。

「心当たりはありません。」

「そうか。ではなぜ君はラッパを吹いているのか？」

「ラッパじゃなくてトロンボーンです！」

私はついカッとなって叫んでしまった。大体にして形が全然違う。だが、ここは冷静に。私は答えた。

「……自分の納得のする音が聞こえないからです。想いのある音をだせてないから、出せるまでやります。」

プロの人が演奏した物には、必ず音色に想いがのっている。私にはそれがない。私はいつかこの想いを乗せて演奏することが夢だ。

「そうか。」

突然表情を変えて開発室長は私をスカウトした。

「君、突然だが、ボーダーに入らないかい？」

「え？」

そこ計り知れない探究心が声色を染め上げ、開発室を木霊していた。

「君には、ボーダー隊員としての才能があるということがわかった。ぜひ入って見ないか？」

開発室長．．．いや鬼怒田さんは本気で私を誘う気なのだろう。

「正隊員になれば給料がでる。完全に君にとってマイナスなわけではないだろう？」

給料……今中学生がバイトを探そうとして、合法的に雇ってもらえるところなんてあるのだろうか。

もともと経済的余裕は無かった。

「そうですね……入ります。ボーダーに。」