奏 (ページ9)

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8話ページ9

あー寒い。

不意に飛び出した先は真冬の真夜中の外。寒くない訳がない。少し考えれば分かることじゃないか。A。

「ん？あんたは．．．。」

目の前にいる白髪の男の子に目を向ける。私たちがさっきまで狙っていた近界民(ネイバー)じゃないか。

「ん？あんた。おれのこと知ってるの？」

「いや、知らない。」

そいつは私をまるで試しているかのような目付きでこちらを見ていた。

「おまえ、つまんない嘘つくね。」

確かに警戒区域をこんな時間に彷徨いてる女の子なんてボーダー隊員か家出少女ぐらいしかいないだろう。

「そうね。ところで君。ボーダーに入ったらしいわね。そんなこと上が許すとでも思うのかしら？」

「林道支部長や迅さんはおれのことを勧誘してくれたよ？」

そいつの声色は「無音」だった。殺意も、敵意も好意も、何もかも、感じない。

感じるのも不快だが、全く感じれないのも不快だな。この時初めてそう思った。ああ。不快。不快。とても不快。

「これだから、近界民(ネイバー)は嫌いなんだよね。話が通じないの。」

自分でも感じる。負の感情が一変に湧き上がっていくのを。心の底にある憎悪を近界民(ネイバー)に最大にぶつけている。

コトコト、コトコト、はっとして気づくと迅さんが後ろからやってきた。あー、どうせ見えていたんだろうな。

「よ、遊真に涼風。珍しい組み合わせだな。」

「あ、迅さん。」

「．．．．．．要件は？」

いやー冷たいねーっとか迅さんが言ってた気がするけど、そんなことより、さっきの戦いの後なのに平然としてることに意識が向いてしまう。

「そうだな。簡潔に言うんなら、すぐに家に帰って体を休めろ。ってだけだな。」

「そうね。」

確かに言われて見れば、遠征帰りで体はかなり疲れてる。疲れてるのは精神力だけではなかった。

遊真side

「迅さん。何か未来が見えたの？」

「まあね。でも、未来を見なくたってわかるよ。涼風が休んだ方がいいのは。」