3 ページ3
「隊服受け取りに来ました」
三日後、真選組の山崎退が店へとやってきた。
気配的に、この人がいつも私のことを監視しているのだろう。
あくまでも向こうは口を割らないが。
「三着はもう使えないから幕府に新しく申請して。あとは直したから」
「分かりました」
白い袋に入った隊服と茶封筒に入った札束を交換して山崎は帰っていく。
封筒の中身を確認してみれば、有り得ないほどの大金が入っていた。
金積めば私が言うこと聞くとでも思ってるのかしら。
まあ聞くけど。
札束をへそくり入れにしている本棚の奥に仕舞い、一息つく。
この間近くの古びた店で買ったスルメを食べながらテレビを見ていると、人気天人アイドルがMCをする歴史番組が流れていた。
「今日の特集は攘夷戦争!天人対攘夷志士による戦いとして有名ですよね!」
ポロリ
スルメが落ちる。
なんでたった数年前の戦争がこんなに取り上げられてるんだ。
それにこの戦争に参戦した人達はもうほとんどこの世にはいない。
残された人たちの傷をえぐるような、そんな企画あってたまるか。
テレビを消そうとリモコンを手に取った途端、同時にテレビには砂嵐が流れて電源が落ちた。
「あれ、え?」
何度か電源ボタンを押してみてもテレビがつかない。
仕方なくラジオを引き出しの奥から引っ張り出すと、テレビ局のカメラとテープが壊された、との報道が流れてきた。
テープが壊れたってことは、もう流れる心配はなさそうね。
一体誰がこんなことを、と考えた時にふと浮かぶのは髪の長いアイツの顔。
捉え方によっては攘夷志士をバカにしかねないあの特集を、アイツが黙ってこの江戸中に流させるわけが無い。
それにしても、こんなことして捕まってないといいけど。
ドォンッ ドォンッ
遠くの方で轟く爆発音に思わず笑みが零れる。
あんなに暴れて、修理する人たちも大変になりそうだし、それに、暫くは沖田総悟がここにサボりに来ないだろう。
絡まれなくて済むから私としてはありがたい。
電源がつかなくなったテレビに映る自分を見てため息をつく。
随分痩せてしまった、と自覚出来るほどに顔がやつれていた。
「っ、少しここで休ませてくれぬか…!」
「…!?は、はい…!」
突然入ってきた男の声に、背筋がピンと伸びる。
な、なんで桂がここに…?
続く (更新停止中) お気に入り登録で更新通知を受け取ろう
←2
5人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ことは | 作者ホームページ:
作成日時:2023年1月26日 1時