自分の事は自分が一番よく知っている ページ20
『あれ？』
辺りにはガラス細工が浮かび、全体的に彩度が低い。この場所には来たことがあると思うが、どこだったのだろうか。
＿マタ、会イマシタネ。
『？…あっ！』
そうだ、ここは前に先見の明が誤作動を起こしたときに見た夢で来たんだ。
＿トウトウヤッテ来マシタ。旅ノ始マリデス。
『旅？前も言ってたけど、旅って具体的には何が始まるの？』
＿貴方ハ知ッテイル筈デス。彼処ニ、浮カンデイル硝子ノ珠ノ様ナ物ガアリマスネ？
『ああ、それがどうかした？』
＿コレヲ。
何か差し出してきた…欠片？
＿コレハ貴方ノ
『失った？やっぱり僕が記憶喪失みたいに言うんだな。』
＿ショウガナイデスネ、少シ手助ケシマショウ。
そう言うと、そこらに浮かんだ何かが欠けたガラスを一つ取り、持っていた欠片をはめ込んだ。
その瞬間、僕の脳裏に何か映像が流れてきた。それは僕がいつも見る先見の明と同じものだった。
＿貴方ガ見テイルノハ、失ッタ記憶ト云ウノハオ話シタト思イマス。
確かにそんな事も言っていた。
だが、それが僕の記憶なら、それはどうも可笑しい。
記憶とは、過去の経験の内容を保持すること。そう、飽くまでも過去だ。未来を写すことは無い筈だ。
＿ソレモ、欠片ヲハメ込ンデ行ケバワカリマス。私モ手伝イマスカラ。
僕の中には、何か底知れぬ不安があった。
記憶を取り戻していくことで、より深い絶望に叩き落とされるのでは無いかと。
＿…一ツ、助言ヲシマス。
ソイツはこちらに近づいてきて、僕の頬に手を添えて言った。
＿貴方ノ決意ヲ私ハ知ッテイマス。例エ貴方ガ忘レテモ私ハ覚エテイマス。何時デモ貴方ハ此処デ折レズ、何度モ立チ向カッテ行ッタ…。私ヲ、ソシテ貴方自身ヲ信ジルノデス。
その言葉はスッと心の中に入ってきた。
どれだけのベテラン教師でもここまで僕を突き動かすことは出来ないと、確信できるほどに。
『…ああ、やってみるよ。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 72人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
瑠花 - こんばんは、初コメ失礼します！すごく面白くて一気に引き込まれてしまいました…！！表現力が羨ましいです！！あとこんなことでなんですが私も貴利矢さん大好きですw忙殺されて身体が橘さんにならないよう、体調にお気をつけてください〜〜！！応援してます！！ (2020年12月30日 23時) (
レス) id: c4c21690fd (このIDを非表示/違反報告)
MARE(プロフ) - 面白いです!更新頑張って下さい､､! (2020年12月1日 8時) (レス) id: 7446762651 (このIDを非表示/違反報告)
とけいそう(プロフ) - 面白くて続きとっても気になります…！更新無理せず続けて欲しいです！ (2020年11月30日 22時) (レス) id: 0d837f5408 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：男主愛好家 x他1人 | 作成日時：2020年11月29日 2時
