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被害は思ったよりも小さく、
地震による津波もなく、被害は停電のみ。死亡者はゼロ。
電気会社の人、頑張れ。
警察庁はというと、保存できていなかった作成中の資料を手分けして手直ししていた。
家に帰ったのは2日経った頃。
家の中は、聖さんがきれいにしてくれたのか片付いていた。
『ありがとうございました』
「無事で何よりだよ」
『聖さんも』
「それでね、考えたんだ。こういう時に家にいてくれたら俺も安心するな、と思って」
『…』
「そろそろ家庭に入らないか?」
『それは…』
「結婚しよう」
突然の展開に、目の前がチカチカする。
「式は前に言ったように上げることはできない。でも、Aを俺の籍に入れたいんだ」
『うれしいです。これでようやく“牟呂 A”になれるんですね』
「…いい名前だ」
やさしく包み込んでくれる聖さんにしがみついて泣く。
そんな私をやさしく撫でながら笑う聖さん。
幸せだ…。
でも…
『聖さん、結婚はお受けします。でも、仕事は続けたいです』
「…どうしても?」
『はい。今、とてもやりがいを感じています』
「…」
『聖さんの過程に入ってほしい理由も、重々承知です。でも…』
「わかった。…わかったよ。ただし、辛くなったらやめること。いいね?」
『はい』
じゃあ、ご飯にしようか とキッチンに向かう彼の背中を眺める。
私はなぜ仕事を続けたいのか。
もちろん、仕事にやりがいがある。
でも、ふと降谷さんの顔がよぎったのは、なぜだろう。
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作者名:エナガ | 作成日時:2018年10月31日 20時