れんげ (ページ1)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:267 hit

すぐ側にある末期 ① ページ1

『ａｍ８：００』

デジタルに表記し、知らせのアラームが鳴る。

小さくて真っ白なこの籠の中では十分なくらいで
少し耳が痛い。

カーテンの向こう側は今日も忙しそう。

だけど私はそれが羨ましい。

出歩くことが許されない毎日。

いわば自由になることなく死を待つだけの人生。

ここは都内の総合病院。

この個室には常に点滴の水音が響く。

生まれつき死に至る病を持つ私は
誰からどう見ても悲運だけれど、

闘病生活にも慣れているし
自分がもうじき死ぬということには
抵抗がなかった。

手元のリモコンボタンを押し、
テレビをつける。

自分一人の病室だから、
気を配る必要がなくて助かっている。

『それでは占いコーナーです。
今日一番いい運勢はー…

天秤座の貴方！
気になるあのヒトに急接近できる日！
恋が実るかもしれませんね！』

「あ…。一番だ。」

恋なんて誰にもしたことがないくせに、
こんなことでも一番は嬉しく感じる。

カーテンから注ぐ朝日が
私の感情を察知したかのように

タイミングよくこちらを照らし始めた。

うっすらと見える青空に陰りが何もなくて、

快晴でほどよい気温の今日は、
もう一眠りしたくなった。