【ヴィランズ手下】深海の唄【エイトフット】

タコが33匹 ページ35

「おー…なんか久しぶり…」


あのまま連れられて海に来た


夕日が海に反射してとても美しい


「やっぱり海はいいねー」


「…A」


突然、名前を呼ばれドキッとする


振り向くと彼はとても真剣な表情をしていた


「お前…苦しいんだろ」


ああ


やっぱり彼は…


「そ、そんなこと…」


「またそうやって無理して笑ってる」


見抜かれているみたいだ


「だけど…周りの人を傷つけるわけには…」


「自分が傷ついてたら駄目だろうが」


言い返せずに俯く


「お前は少し…あの言葉に囚われすぎだ」


「でもっ… …!?」


急に腕をぐいと引かれた


そのまま私はジョーの胸に収まってしまった


「………えっ…？」


今


私はジョーに抱きしめられている


いつも拒否していた彼が、自ら


胸がどんどん高鳴っていく


「なぁ…A」


耳元で呼ばれさらに心拍数は上がる


「辛いなら辛いって言え 怖いなら怖いって言え」


「……っ」


その言葉に涙が出そうになる


でも泣くわけにはいかない


でも ジョーには気づかれたみたいだ


「何だ…？泣きてえのか？」


少し笑いながら私に問う


いつもの私なら否定するところだけれど


「……うん…」


自然にそう答えていた


「そうか…」


すると、彼の抱きしめる力が強くなった気がした


「泣けよ 好きなだけ」


その瞬間、私の目から雫がこぼれ落ちた


「うっ…あ…」


人の前で泣くなんて、これが初めてだ


それほどまでに私は彼に心を開いていたんだ


彼に出会えて良かった


本当に 良かった


彼は、私が泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた

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