第7首 ページ8
『Aちゃんは、何部に入るか決まった〜?』
「あー、うん。まぁ」
昼休み。教室で1人メロンパンを頰張っていると、俗に言う一軍女子、永瀬加奈が隣に座った。
『へー。何部?』
「……競技かるた」
私が問いに答えると、一気に眉根を潜めた。
予想通りすぎる表情に最早、ため息すら出てこない。
『きょ、競技かるたってアレでしょ?100個覚えるやつ』
「そうだね」
自分から聞いただけに、引くのを多少申し訳なく思っているのか、無理に会話を続けようとする相手。
「いーよ、そういう反応慣れてるし。無理に会話続ける方がはっきり言って辛い」
『そ、そっかぁ…』
苦笑いをしながら、私の隣から退くと逃げるように仲間たちの方へ戻っていった。
昔から、彼女のような反応には慣れていた。
幼かった頃の私は、仲間を増やそうと友人達を競技かるたに誘っていたけれど。
“競技かるた?何それ、ダッサ”
“そんなのにハマる人なんているんだね”
話せば話すほど、人が寄り付かなくなって。
気がつけばいつも1人になっていた。
変わり者。私への評価はずっとそんなものだ。
酷く味気ないメロンパンを胃に流し込み、ウォークマンをカバンから取り出す。音量は極力小さくして、ランダム再生を選択して目を瞑る。
師匠が大ファンの、山城さんの伸びやかな声がヘッドフォンから流れ出し、私を別世界へと導いてくれる。
⦅これやこの…⦆
『あのっ!』
突如、背後から聞こえた声に驚く。
若干イライラしながら振り向く。
「なに?」
『競技かるた、やるんですか?』
和泉、だったっけ?
そういえばこの間、大会で見た気がする。
「やるっていうか…。私にはかるたしかないからさ」
『お、俺もなんです!良かったら今日の部活見学ご一緒してもいいですか⁈』
「いや、私は1人で…」
『お願いします!』
しまいには頭を下げられてしまったし、なによりあまり面倒くさい事態になりたくないし、で結局了承した。
部活見学って言っても、私は入部する意思を伝えてすぐに帰るつもりだったのだが。
結果として面倒くさい事態を発生させたのは、自分であったことに、心底嫌気がさした。
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作者名:だいすけ x他1人 | 作成日時:2018年1月14日 23時