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8話 ページ10

「はぁ?如何いう事だ?」

中也さんの表情は正に開いた口が塞がらないという諺が相応しい。

「えっと、此処数年ずっとホテル暮らしで…」

「…でも、お金がそろそろ底を突きそうなので、安い処に移ろうと思っていまして…今から探そうかと…」

「…手前、親無しか…?」

「え、あ…はい。」

今の話から察したのだろうか。
まぁ、先ず親が居ればこんな夜に小さい子を連れて、裏社会と関わる人が何処にいよう。
色々とおかしな点に中也さんも気付いていたのだろう。

「…」

彼の方に目を向けるのと、彼が一瞬、考え込む様な表情をするのとが同時だった。

彼の其の表情に何故か深い影を感じると云うか、何とも云えない不安に襲われた。

「…あの、」

少しの沈黙にも耐えられず、私が切り出すと、

「はぁぁ、」

盛大な溜息をつかれた。

「阿呆か手前は!狙われやすいって時に、んな安い宿に泊まる莫迦が居るかよ!」

続けて怒鳴られる。

「大丈夫ですよ。優弥の事なら絶対に守ります。」

「先刻は突っ立ってることしか出来なかったのにか?」

「先刻のは相手が悪かっただけで!」

段々白熱していく怒鳴り合いに訳が判らなくなってきた頃、

ベシッ!

と頭を叩かれた。

「ゆ、優弥…?」

其の手の主は優弥だった。

「お兄ちゃんも、お姉ちゃんもダメでしょ!」

「喧嘩はダメ!ごめんなさいして!」

無理矢理私の腕から抜け出て、目尻に涙を溜め乍ら私達を叱る優弥。

其れを見ていると、何を言い合ってたのだろう、と云う疑問さえ如何でも善くなる。

「あー…悪ぃ。」

「…私も、御免なさい。」

二人して謝ると、優弥は大きく笑って、私達二人の手を握った。

「あぁ、そうだ。目的を忘れちまう処だったな。」

目的…?
何の事か判らず、首を傾げる。

「手前等、俺の家に泊まれ。」

「…え!?」

何を云っているの、この人は。
そんな迷惑かけられる筈が無い。

「そ、そんな迷惑かけられませんっ!」

「ちっ、まぁ云うとは思ってたが、」

「安心しろ。只では泊めねぇよ。」

条件付きで泊めてやる、と云う中也さん。
其れも其れで…と云う気もするが、若し本当に中也さんの家に泊めて貰えるなら、此れ程セキュリティに安心出来る処は無い。

「条件とは…?」

問うと、中也さんは云った。

「手前の復讐とやらについて、話せ。」

…此れは完敗だ。
私に申し訳ない、迷惑になってしまうなどと考えさせない条件。
私にとってこの事を話すのは、人の家に泊まらせて貰う以上の価値がある。

「…判りました。」

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設定タグ:文豪ストレイドッグス , 中原中也 , 文スト   
作品ジャンル:恋愛
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2018年6月24日 16時

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