6話―1 ページ7
「首領、這入ります。」
中也さんがそう云うと、重厚な扉がギギギ、と
音を立てて開かれ、蝋燭の灯った、薄暗い部屋が姿を現した。
中也さん、私、そして先刻車内で名前を聞いた芥川さんが中に通された。
目の前の大きなテーブルには中年の男性と金髪の可愛らしい女の子が座っていた。
女の子の方はとても幸せそうな表情で西洋菓子を口に運んでいる。
中年の男性、恐らくポートマフィアの首領、森鴎外であろう彼は、金髪の幼女にデレデレとした表情を向けながら、話し掛けていた。
「エリスちゃーん、其れを食べたら、私の選んだドレス、着て呉れるんだよね?」
「矢っ張り、シュークリームも食べたいわ。
リンタロウ、持ってきて。」
「食べ過ぎは駄目だよ、エリスちゃん〜。」
……此れがマフィアの首領…?
今迄見てきた裏社会の長達とは似ても似つかない表情で振る舞う彼に思わず目を見張る。
そんな私を余所に中也さんと芥川さんは報告を始めた。先刻迄女の子と話していた森さんも笑みは崩さないものの、真剣な顔つきになっていた。
「去説、A君だったかね。」
「えっ…は、はいっ!」
吃驚したぁ…
気付けば、中也さん達はもう部屋から出ていた。
視線を戻すと、森さんは再び話し始めた。
「A君、ポートマフィアに入る気はないかね?」
矢っ張りそう来るよね…
中也さんから話を聞いて、私の異能の事を考えて、大体予想はついていた。
私の異能は殺しに向いてるから。
でも…
「お断りします、と言ったら如何なりますか。」
「其れは有り得ないよ。」
マフィアの首領に半分喧嘩を吹っ掛けた為、
心中穏やかではない。
煩く脈打つ心臓に耳を傾け乍ら待っていると、
森さんは動揺する様子も無く、そう返してきた。
「何故判るのですか?」
「其れが君にとって最適解だからだよ。」
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作者名:睡蓮 | 作成日時:2018年6月24日 16時