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さんじゅうに ページ32

「ありがとな」

「ううん、こっちこそなんか雑でごめんね」


「それで、俺が抱える気持ちは?」


「あ、そっか」



実験の終わりは、もうすぐそこ。
あとは4分見つめ合うだけ。


そこが一番緊張するんだけどな。




「んー、コンプレックスに感じてそう。トラファルガーって自分に厳しそうだから」


「そうか? ありがとう」


雨宮は褒めてないよと笑う。
あとは、見つめ合うだけ。


これで実験は終わるけど、でも、

どんな結果になっても俺は、それを甘んじて受け入れよう。



好きになってもらえなくても、失恋してしまったとしても、
きっと俺は、

後悔しないで、潔く自分の気持ちを伝えよう。



この実験に、背中を押してもらったんだ。

こういう時は何というんだったか、当たって砕けろ、だったっけか。



「終わったね」

「あぁ」



「えっと、このあとは、4分間見つめ合うんだっけ」


「そうだ。タイマー出すか」



さっきも4分をセットしたから、タイマーのアプリを開けば、すぐに準備が整った。
スマホを丁度彼女との真ん中に置き、体ごと俺の方を見た雨宮と同じように、俺も姿勢を彼女の方に向けた。



こうしてみると、随分と華奢で、俺との身長差も大きい雨宮。
向かい合って見つめ合うなんて、俺の心臓は果たして持つだろうか。



「いつでも始められるぞ」


「ねぇひとつ確認なんだけどさ、これって無言で見つめ合うの?」


「別に話はしてもいいんじゃねぇか? 特に指定はないし」



雨宮は、そっかと呟いて背を少しだけ伸ばす。
それを確認した俺は、静かにスタートボタンをタップした。



「……」

「……」

「………」



俺が雨宮の顔をじっと見つめ続けているのとは反対に、彼女は挙動不審で、瞳がキョロキョロと動いて酷く動揺している。

眉と眉の間を見るんじゃなかったのか、と思わず笑ってしまう。


「おい、雨宮。ちゃんとこっち見ろ」

「へっ!?」

「焦りすぎだ。別に獲って食ったりしねぇよ」



ひゅっと両手を上げて笑うと、雨宮は唇をキュッと結んで、顔を赤く染め上げた。


自分だって、バクバクと今まで以上に心拍数を上げているけれど。

さんじゅうさん→←さんじゅういち



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もち - にやにやとどきどきとほっこりが止まりません!イッキ読みしました!!ありがとうございます! (2021年5月31日 4時) (レス) id: 7417fbe2bd (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 天然水さん» ありがとうございます〜!めちゃくちゃ嬉しいです!! (2021年4月7日 19時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
天然水(プロフ) - とても素敵な作品で前作から読んでます^^ 素敵な作品有難う御座いますっ! (2021年4月6日 0時) (レス) id: 5091cdfe04 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!その言葉のおかげで頑張れます!! (2021年4月4日 21時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しみに待ってました!!弥生さんの作品全部読ませてもらいました。好みどストライクで、最近の生きがいです(笑)これからも無理ない程度に頑張ってください! (2021年4月2日 23時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生 | 作成日時:2021年4月2日 15時

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