し ページ4
ちらり、と雨宮の目線がこちらに向けられる。
「先答える？」
「それじゃ実験通りにならない。待ってるからちゃんと答えろ」
「はいはい、変なとこで堅物なんだから」
面倒くさそうに椅子の背もたれに身をもたせて、雨宮はもう一度唇に手を当てる。
「大事な人にちゃんと会える日、とか」
静寂の中に、ぽつりと浮かぶ、雨宮の凛とした声。
その答えに、思わずドクンと心臓が跳ねた。
それと同時に、チクリ、と刺すような痛みが走った。
雨宮の、大事な人。
そんな意味じゃない、きっと。
そう言い聞かせて、ゆっくりと口を開く。
「大事な人、って誰だ」
え、と小さな声を漏らして、雨宮は俺の方に目を向けた。
「特定の誰かじゃないよ。父さんとか母さんとか兄さんとか友達とか…。あ、トラファルガーもだよ？」
最後の一言で、体の中をめぐるこそばゆい感覚。
暖かい、でも少し照れくさい。
緩む表情筋のせいで、顔がにやけてしまって、誤魔化すように口許を覆って頬杖をついた。
「…そうかよ」
目を逸らすと、雨宮が俺の答えを促す。
俺の方を見つめる彼女の大きな瞳が、俺の姿を映し出す。
俺だけが、今雨宮の目に映っている。
俺の、完璧な日、というよりも、完璧な瞬間は、今のこの時間。
雨宮が俺だけを見つめて、俺も雨宮だけを見ていられる。
まぁそんなこと馬鹿正直に話せるわけもないが。
「俺の完璧な日は、今日だ」
「はい？ ちょっと意図が読み取れないんだけど」
「それでも現代文トップか。行間を読め」
自分の気持ちが悟られぬように、いつものようにおちょくってやると、複雑そうに唇をへの字に結び、うーんと首を傾げている。
「だから、木曜日が俺の完璧な日だ。例外はあるがな」
「なんで木曜日？」
「理由を答えろとは書いてないだろ。次行くぞ。
最後に一人で歌を歌ったのはいつか。また、誰かに対して歌ったのはいつか」
じとり、と隣から俺の方を睨みつける雨宮の視線を感じながら、俺はてきとうにはぐらかして、スマホの液晶に映し出された文章を読み上げた。
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もち - にやにやとどきどきとほっこりが止まりません！イッキ読みしました！！ありがとうございます！ (2021年5月31日 4時) (
レス) id: 7417fbe2bd (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 天然水さん» ありがとうございます〜！めちゃくちゃ嬉しいです！！ (2021年4月7日 19時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
天然水(プロフ) - とても素敵な作品で前作から読んでます＾＾ 素敵な作品有難う御座いますっ！ (2021年4月6日 0時) (レス) id: 5091cdfe04 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます！その言葉のおかげで頑張れます！！ (2021年4月4日 21時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しみに待ってました！！弥生さんの作品全部読ませてもらいました。好みどストライクで、最近の生きがいです（笑）これからも無理ない程度に頑張ってください！ (2021年4月2日 23時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：弥生 | 作成日時：2021年4月2日 15時
