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じゅうさん ページ13

「おぉ、時間ぴったり〜」


雨宮が嬉しそうな声を零す中、俺は悶々とした気分でスマホに手を伸ばす。
すると、こつん、と手がぶつかる。
白くて小さくて、綺麗な、雨宮の手と。


「あ、ごめん」


「っ、わりィ」



バッと、手を引っ込める。
あまりに大袈裟だったのを不思議に思ったのか、雨宮は首を傾げながらもタイマーを止めた。



雨宮の、初恋の人。
俺の知らない、知らなかった雨宮。


知りたくなかった。


ずきりと痛む胸。
こんなにも自分が傷つくなんて、思っていなかった。
自分の話だってしてくれたはずなのに、それを覆い隠すぐらい、俺は随分とショックを受けていた。


妙な空気の中、あたりはしん、と静まり返る。




「…次行く?」


「そう、だな」





「次私か。えーと、明日の朝、目が覚めた時に何か能力が身についています。どんな能力がいいですか。


能力ねぇ〜。またSFじみてきたなぁ」



雨宮は、頬杖をついて考え込んでいた。
その間も、まだ少しさっきの余韻が残る。



「んー、テレポートできたらいいなぁ」


「なんでまた」


「ホームルームの時間になったら学校にテレポートしてこれば、時間ギリギリまで寝てられるじゃん」



びしっと指を差しながら、ドヤ顔で俺の方に振り返る雨宮の言葉に、思わず呆れて笑ってしまう。



「俺は、…正直になりたい」


「能力なのそれ」


「俺にとってはこの上なく難しいことなんだよ」



雨宮は、ふうん、と軽い返事が返ってきた。


「真面目に聞け」


さっきのことでもやもやしていた気持ちを晴らすのと、軽い仕返しも込めて、雨宮の耳たぶをグイッと引っ張っておいた。



「これでレベル1終わりだってさ。結構時間かかったね」


「そうだな。さっさと次に行くか。下校時刻までに間に合わねェ」



窓の外から、5時を知らせるサイレンが聞こえてきた。
俺はその音を聞きながら、指でスマホの画面をスクロールする。


「13、もしも、あなたの将来や人生を教えてくれる水晶があったら、何を知りたいか」


「さっきから話に現実味がないんだけど」


「こっちはもしかしたらあるかもしれねェだろ。占いとか」


「トラファルガーって占い信じるタイプ?」


そういうわけじゃないが、まぁ、雨宮に振り向いてもらえるならきっと占いにでも縋るだろう。



「女子はそう言うの好きじゃねェのか」


「私は好まないよ? 物語の中なら受け入れられるけど」



俺は、そう言うモンか、と小さく呟いておいた。

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もち - にやにやとどきどきとほっこりが止まりません!イッキ読みしました!!ありがとうございます! (2021年5月31日 4時) (レス) id: 7417fbe2bd (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - 天然水さん» ありがとうございます〜!めちゃくちゃ嬉しいです!! (2021年4月7日 19時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
天然水(プロフ) - とても素敵な作品で前作から読んでます^^ 素敵な作品有難う御座いますっ! (2021年4月6日 0時) (レス) id: 5091cdfe04 (このIDを非表示/違反報告)
弥生(プロフ) - マリンさん» ありがとうございます!その言葉のおかげで頑張れます!! (2021年4月4日 21時) (レス) id: b916418063 (このIDを非表示/違反報告)
マリン(プロフ) - 楽しみに待ってました!!弥生さんの作品全部読ませてもらいました。好みどストライクで、最近の生きがいです(笑)これからも無理ない程度に頑張ってください! (2021年4月2日 23時) (レス) id: 999a9c72ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:弥生 | 作成日時:2021年4月2日 15時

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