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貴方と生きる、それは何か プリン×創作御侍 6 ページ8

6.
「もっと……」
 傷口を舐める舌が二本の指の血肉を愛おしげに撫でる。くすぐったい柔らかな感触が食霊の心境をぐらぐらと揺すぶっていた。
 額に当てていた右手を青年の後頭部へ移動させた食霊が手を力ませ、ゆっくりと、頭部を押した。
 二本の指が青年の奥へ侵入していく。
「そんなに食べたいのなら、そのまま食べてしまっても、構いませんよ」
 御侍があんまり美味しそうに自分の指を舐めるので食霊は咄嗟にその光景から、御侍が現在、最も望んでいそうな言葉を投げかけた。
 興奮状態にあった御侍がぴたりと動きを止め、睨みを利かせて、食霊の顔を見上げる。予想だにしていなかった青年の変化に、食霊は戸惑いを隠しきれなかった。
「御侍様?」
 食霊の指から、青年が口を離そうとする。
「もう、宜しいのですか?」
 指の中心をなぞるように伝いながら離れていく舌には、食霊の指にねっとりと絡みついた温かな唾液が、とろりと生々しく滴っている。
 指から舌を離された後も、歯の尖端が当たった部分は鋸の刃でも当てられたような、指の皮膚に残る地味な痛みが、身体へ一定の刺激を与え続けていた。
 彼の御侍は豹変し、滅多に威圧してこない目付きを珍しく意図的に鋭くさせて、威勢よく言い捨てた。
「駄目だ」
 食霊ではなく、自分へ強く言いつけるように発する青年の口調が、食霊の耳に、妙に残る。
 御侍が気に食わないのは先程、自分が、食べてもいい、と発言した事についてだろう。
 御侍が自分を食べたいと思っていないのなら、この前あった出来事は、どう捉えたらよいのだろう。
「その反応は予想外でした」
 困惑していたが、御侍の一言に驚愕したことには変わりない。
 食霊は聞き慣れない言動が度重なる御侍を前にして、青年の目を凝視した。
 赤みを帯びたサングラス越しに見える金の瞳がサングラスの色と丁度よく重なり合い、彼の瞳を琥珀色に見せていた。
「御侍様はてっきり、私を食べたがっているとばかり思っていたのですが」
 煽情したがっているとも捉えられる台詞と物言いで、御侍へ挑発的な態度を取る。
「食べたい。でも、それは、できない。だって、お前が居ないと、俺は」
 御侍の息が過呼吸とも表現できる程に荒くなった。食霊の服にしがみつく御侍が両手に込める力も、段々と荒さを増してゆく息と比例して、時間を経るにつれ強められていく。
 自分の理性との、仁義なき葛藤なのだろう。
 食霊は御侍の行動を、そう解釈していた。

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炬燵の番人(プロフ) - 2019年、1年間書き続けてきた作品の全てを一気にまとめている真っ只中です。 (2020年1月13日 21時) (レス) id: 7b96dd935e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炬燵の番人 | 作成日時:2020年1月13日 21時

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