プリン三昧のフーファン短編集 (ページ5)

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貴方と生きる、それは何か　プリン×創作御侍 3 ページ5

3.
　アシスト系食霊の知人から二人がかりでの手厚い治療を施され、注文もしていないのに美味しいコーヒーで店員の意のままにもてなされた。
　血で汚れた衣服の代わりに、店長のワイシャツやズボンを烏滸がましくも一時的に拝借してしまったし、店の皆には頭が上がらない。
　彼が帰ろうとした頃には、空が西へと傾いていた。夕時に一人で外を出歩けば、また堕神に襲われてしまうのではと案じられたのか。
　店長と、店員と。
　店員の友人らしい常連の客は閉店時間が迫り来ているのを良いことに、彼を三人がかりで守りながらグルイラオの交易都市ヒレイナまで彼に付き添うと決めた。
　店長が持っていた服の中で最も自分の正装に近い衣服を選んだ彼に、店長は道中で緊迫した雰囲気を纏っていた彼の気を和らげようと、場を和ます茶々を入れた。
「私と君は、髪の色がよく似ているでしょう。君が私と親子のように見えてしまうのではないかと案じていたのですが、そんなことはなさそうで、安心しましたよ」
　店員は、極稀にしか口にしない気遣いの言葉を彼に捧げた。
「つらいときは、いつでもカフェに来てください。どちらのお仕事の愚痴であっても私にとっては初めて聞くお話が多く、新鮮な気持ちで耳を傾けることができそうですから」
　常連の客は彼と話す機会こそ無いに等しかったが、相当腕の立つ者らしく店長と店員が彼と言葉を交わしている間は、常に堕神の襲撃に備え、辺りを警戒しているようだった。
　そうこうしているうちに日は暮れてゆき、グルイラオは絶え間ない宵闇に包まれた。
　コルプス亭と彫られた木彫りの掛け看板が吊るされた扉の前で、カフェの知人達に尽きることのない感謝と別れを告げ、彼は扉を開ける。
　カランコロンと店内へ彼を受け入れる入店ベルの音が鳴り、掃除の行き届いたレストランの客間に出た。
　普段は自分が掃除をしなければ整えられてすらいない筈の空間が整然としていることに、御侍の僅かな成長を感じる。
　誰もいない客間から察するに、御侍は今頃、閉店後の片付けに取り組んでいる頃だろう。
　厨房の扉を開けると、こちらへ背を向け、独りで皿を洗う御侍の姿があった。男性にしては背丈が低いこともあり、こまごまと働く御侍の姿には、一生懸命、滑車を駆けて回すハムスターのような愛らしさがある。