悲願の飽満 プリン×創作御侍 1 ページ30
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窓へ差し込む赤々とした夕陽を認めた私は時間の過ぎる早さを痛感し、空の暮れ具合へ初めて気を向ける。調理へ没頭していた忙しい手を止め、フライパンの上へ無造作に寝そべったステーキの出来を、絢爛豪華な深紅の宝石でも鑑定するように。じっくり目を凝らし、品定めする。
「きっかり時間通りです」
掛け時計の時針が示す数字を横目に頷き、調理台へ並べ置いた料理の群れを見渡す。自分の食べる分と御侍様が召し上がる分を作っている割には量が多いのではと錯覚する数に、配分を間違えたような気分へ浸る。
多忙な御侍様なら、この程度の量は余裕綽々の風格で、ぺろりとたいらげてくれるだろう。普段の食事も二人分とは思えない程に量こそ多いが、それでも御侍様は余す事なく、文句も言わずに。それらを胃へ詰め込んでくれるから。
調理よりも接客業や事務に慣れ親しんできた私は、手の込んだ料理の調理は、あまり得意としていない。調理は最低限、自分が美味しく食べられるものを作り、食べたときに体調へ支障が出ないのなら、その程度の調理技術だけでも十分、生きてはいけるだろうと考えている為だ。現段階で、私はその程度の調理技術を既に習得している。
戦闘の出来ない私としか契約を結んでいない御侍様は、その身分が一般人と同等のものなら、市場にて高値で取引される食材を買い漁るだけで、金貨が涸渇している頃だろう。
のたれ死んでいてもおかしくない金使いの荒さだが、それは、御侍様はそれぐらいの莫大な収入を有する実力派の作家である、という事実を示している。
御侍様の手元へ金貨が放り込まれる循環には、何か深い事情が絡んでいるのではと睨んだ事も、あるには、ある。しかし御侍様の性格上、その線は限りなく薄いだろう。御侍様は、面倒を毛嫌う質なのだから。
他に有り得るのは、御侍様が貴族である可能性ぐらいだ。俄には、信じがたいが。この家は無駄に広いし、広間がある時点で、前は御侍様以外にも、少なく見積もったとしても、五人以上は誰かが暮らしていたと推察できる。
御侍様の振る舞いは貴族のそれとは雲泥の差だが、過去に何かを抱えているのは間違いない。いずれ、何らかの拍子にでも、御侍様の身の上話を知る事ができるといいのだが。
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炬燵の番人(プロフ) - 2019年、1年間書き続けてきた作品の全てを一気にまとめている真っ只中です。 (2020年1月13日 21時) (レス) id: 7b96dd935e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炬燵の番人 | 作成日時:2020年1月13日 21時