貴方と生きる、それは何か プリン×創作御侍 1 ページ3
1.
人手不足だ。
日に日に実感が痛感へ変化してきていたとは言え、やむを得ず強行手段に出た自分が間違っていた。
静まり返った町の片隅。店員や御侍は数ヶ月前に喰われてしまったのだろうと推察できる量の凝固した血痕が残留しているレストランだった廃屋で、左腕を負傷した食霊は手を下へ向け、だらんとだらしなく胴から伸びるだけで、ぶら下がることしかできなくなってしまった自分の腕を眉間に皺を寄せ、一瞥する。
御侍の手を煩わせたくはない。
その一心のみで単独で堕神に挑み、一日六十個程の霊火を倉庫に蓄える生活を繰り返していた。
M食霊に格付けされる自分が戦闘に向いていないのは重々理解していたが、青年の手を借りて戦うより、幾分マシだった。
彼の御侍は悪い意味でも良い意味でも、極端に異質な存在だ。御侍の行動や言動の中には人に見聞きされてはならないものが幾つかあり、御侍が戦っている様子はまさに、そのひとつに含まれる。
息を切らし、壁に背中をくっつけた状態でその場にへたり込むと食霊の脳裏を淡い白黒の映像がよぎっていく。霧が立ち込める映画館のスクリーンで上映したかのような、ぼんやりとした映像だ。
耳鳴りと共に時折脳内で響く歌声は、今は遠き、懐かしの月夜に歌う彼女が奏でる旋律だろう。記憶の中の歌声と現在の彼女の歌声には、歌唱技術の差がよく表れている。
食霊はこのとき、走馬灯ひとつ取っても、食霊と人間の差は埋まらないのだと知った。
映像の流れる長さも、ティアラから消え去る儚さも、死ぬという意味の重みも、食霊と人間には雲泥の差がある。
死は然程、恐ろしいものではない。
彼が最も恐れているのは、死後。
自分を必要とする者が、途方に暮れてしまう事だ。
幸い、近場で治療をしてくれそうな場所には当てがあった。疲労の滲み出た顔で立ち上がり、建物の出口を目指し、足を進める。身体を蝕む怠さが足取りを重くさせるが、軽傷を負った程度の足を易々と止めるわけにもいかない。
身体の半分を引きずり歩き、崩落寸前の廃屋を発った。
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炬燵の番人(プロフ) - 2019年、1年間書き続けてきた作品の全てを一気にまとめている真っ只中です。 (2020年1月13日 21時) (レス) id: 7b96dd935e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:炬燵の番人 | 作成日時:2020年1月13日 21時