雨垂れの唄 プリン×オムライス 6 ページ16
6.
プリンの案内は丁寧で、移動と部屋や施設の説明を重ねて聞き連ねるにつれ食霊の脳へ、すんなりと建物の情報が埋め込まれていった。
この建物は元々、グルイラオの皇都ミドガル近辺に広大な土地を持ち、著名な発明家として歴史に名を刻んだ両親を早くに亡くした貴族の令嬢。
ヴィネット家の当主であり、伯爵の身分を持つキャトル・ヴィネットが両親から授かりし財産のひとつであったらしい。
キャトル伯爵の両親が生きていた頃、この建物は伯爵の両親が作り上げた発明品を置く物置のように扱われていた。
ただの発明品ではない。駄作、失敗作。スクラップの発明品を置く一時的な物置。それが、この建物。通称、人形の家の当時の扱いであったとされている。
人形の家と呼ばれる由縁は、キャトル伯爵がプリンへ建物を譲渡する以前、この家へ運ばれていたスクラップの発明品の殆どが片言の言葉を話す不気味且つ機械的な人形だったからなのだとか。
ヒレイナの人々は人間のように話す機械人形を恐れ、危険を促せるよう、この建物を人形の家と呼び始めた。
町民達が不気味に思い、建物へ不吉な名を付けた事も、ある意味では仕方のない不穏な出来事だったと言えるだろう。
五階まで階層のある実に立派な構えの建物なのに、人間が一人も住んでいない。それなのに、奇妙な咽び声が昼間も夜間も絶え間なく聞こえてくる。
この世の生き地獄とは上手く言ったものだった。
始めは恐れをなした人々が騒ぎ立てた噂話。生き地獄からお化け屋敷。怖いもの見たさで建物へ出入りした人々が話した事実と噂を結び付け、生み出された呼び名が人形の家。
経緯を聞けば聞くほど、食霊の背筋は震え上がった。よもや、こんな身近な街中に、ノンフィクションの怪談話が有象無象に転がっている等とは、微塵も予想だにしていなかったのだ。
事の発端であった発明家の両親亡き後。キャトル伯爵の計らいで、建物の中に放置されていたスクラップの機械人形たちは全て、人気のない場所に建設された、人の目に触れる事もない別荘へ次々と運搬されていった。
この建物が人形の家と恐れられる件数は徐々に減少しつつあったが、キャトル伯爵は人形の家を今後どう扱ってゆくか、異様に悩む。
雨垂れの唄 プリン×オムライス 7→←雨垂れの唄 プリン×オムライス 5
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
炬燵の番人(プロフ) - 2019年、1年間書き続けてきた作品の全てを一気にまとめている真っ只中です。 (2020年1月13日 21時) (
レス) id: 7b96dd935e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：炬燵の番人 | 作成日時：2020年1月13日 21時
