プリン三昧のフーファン短編集 (ページ12)

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雨垂れの唄　プリン×オムライス 2 ページ12

2.
　契約を結んだ当時。御侍はプリンから、これは絶対だと念を押して言われた事がある。
「私は既に、別の仕事を抱えている身です。御侍様の指示には出来る限り従わせていただきますが、優先順位は本職に値する、そちらの仕事の方が遥かに上ですので、ご理解いただけると幸いです」
　理解はしていたが、それがどんな仕事であるかは聞かされてすらいなかった。それが今、漸くプリンの説明により、判明した。
　皆へ歌で束の間の癒しと憩いを運ぶアイドルなる職業に就いている者の手助けをするマネージャー。それが、プリンが長年、全うしてきた本職の名だと聞かされた。
　たった今、召喚したオムライスは自分がマネージメントを担当しているゼリーという食霊を尊敬しているファンで、彼女のアイドルとしての愛称がゼリッチなのでゼリッチはゼリーの事だと思ってもらえると助かる。
　ファンクラブはアイドルのファン達が非公式に作りだした集会か、組織のことを指す。
　理解したと伝えるつもりで、御侍は深く頷いた。
　基礎的な業界用語を一通り説明し終えたプリンは、
「御侍様にご理解いただけたのなら、こちらも説明した甲斐がありました」
　とだけ言い残し、再び黙り込んだ。
「はあぁ……。不運でございますうぅ……。なんで、よりにもよって、このサングラスと……」
　不服そうにぼやく食霊を目にしたプリンが、御侍が口を挟むより先に、すかさず口を開く。
「御侍様。この者への案内は私が請け負います」
「はあぁ？！」
　食霊とプリンの顔を交互に見比べ、御侍は困り顔で食霊に向き直る。
「俺、話す、苦手。オムライス、プリンのこと、嫌い、わかるけど、プリンの、ほうが、案内上手」
「むむっ。そうでございましたか、御侍たん」
「たん？」
　付け加えられた謎の言葉に、思わず聞き返す。
「たん、というのは小生にとって、敬称のようなものでございます。お気になさらず。……とは言え、そんな事情があるなら、しょうがありませんね……。御侍たんがちゃんと理由を言ってくれたから、仕方なく……本っ当に仕方なく！こいつに着いていってやるでございますよ！」
　食霊の承諾を聞き届けたプリンが倉庫の扉へ歩いていく。プリンの後を、食霊は慌ただしい小走りで追いかける。