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貴方が私を食べるまで プリン×創作御侍 2 ページ2

2.
 食べたい食べたい、とぼやいてはいても、結局のところ、退屈による眠気は空腹よりも耐え難いものなのだろう。彼の御侍は赤子のように、布団の中へ突っ込んだ顔の一部である両目を幸せそうに細めると、すうすうと安らかな寝息を立て始める。
「食べ、たい……」
 夢の中でも何かを食べたがっている御侍の耳元に唇を寄せ、御侍の髪を、まるで赤子をあやすように撫で続けながら、食霊は眠り落ちた御侍に問い掛ける。
「御侍様は、何を食べたいのですか?」
 耳元で囁かれ、彼の御侍はくすぐったそうに、ふふ、と愛らしい微笑みを浮かべる。
「プリン、食べたい……」
 寝惚けきった小さな声に、食霊は至って冷静に質問を返した。
「御侍様。貴方が今食べたいプリンは、どちらのプリンでしょうか」
 答えが返ってくるのか些か不安で仕方なかったが、彼の質問は夢の中まで届いたのか、御侍はそれに答えるかのように、食霊の手を、緩い力で握りしめた。
「よく、理解できていませんが。貴方が望むのなら、私は貴方に食べられても構いませんよ」
 食べられても構わない、とは言ったものの、寝てしまった御侍が自分を食べることは不可能に近い。それならば、と食霊はベッドの端から身を乗り出すと、布団に顔を突っ込んだまま、遂に反応すら返さなくなった御侍の両頬を両手で持ち上げた。
 気を失った御侍の唇の端から、つう……っと少量の涎が滴っていた。その涎を何の躊躇いもなく舐め取ると、食霊は御侍の代わりに、喰らいつくような口付けで、御侍の唇に吸い付いた。
「今はこれで、我慢してください」
 深い眠りにつく御侍へそう言い残し、彼は残りの仕事を終わらせるべく、御侍の部屋を立ち去った。
 布団の上で嬉しそうに口元を緩ませる青年の姿に、気付く事もなく。

貴方と生きる、それは何か プリン×創作御侍 1→←貴方が私を食べるまで プリン×創作御侍 1



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炬燵の番人(プロフ) - 2019年、1年間書き続けてきた作品の全てを一気にまとめている真っ只中です。 (2020年1月13日 21時) (レス) id: 7b96dd935e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:炬燵の番人 | 作成日時:2020年1月13日 21時

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