【男主】もう一人の劣等生

５　入学式 ページ7

６年前に離れて以来のちゃんとした再会
背も伸びて大人びているのに
影には何処かおどけなさが残る顔


深「あ、あの…Aお兄様」


『Aでいいよ、俺とはそういう約束だろ？』


深「ですが‥『いいから呼んで？』
…A、お久しぶりです」


『うん、有難う。
久しぶりに会ったというのに
倒れちゃってごめんね』


深「謝らないでください！
Aは何も悪くあありません」


『深雪のその言葉だけで救われるよ』


クスリとほほ笑み深雪の頭を撫でる
頬を染めながらも嬉しそうに
見上げる深雪を見ていると心が落ち着く


「あの…先程、あの人たちから
電話がありました。入学祝だとか‥
…それでAにはその」


『いつも通りだよ』


深「そう、ですか…
結局、メールも無しですか…」


『きっと達也も同じ答えが返ってくる
‥深雪、落ち着いて』


辺りを冷気で凍結させる深雪の肩を
そっと触り微笑む


深「申し訳ありません
…取り乱してしまいました」


『深雪達の傍に居たいと
親父の仕事を無視して進学したんだ』


達「それに、あてにされていたと思えば
Aも俺も腹も立たんよ」


何処から話を聞いていたのかは知らないが
いつの間にか傍に立っていた達也


深「お兄様たちがそう仰るのであれば」


二人をぎゅっと抱きしめてくる深雪
可愛いなと頭を撫でる


達「そろそろお休み」


頬を撫でながら深雪と会話をする達也
深雪に対しての優しい目線を見ると
少し心が痛む、どこに嫉妬してるのだろうと
呆れてしまったりもする


深「はい。A、お兄様おやすみなさい」


離れては軽く会釈し自室に戻る深雪
リビングに二人きりになった


『深雪だけ先に寝かせて
…話があるんじゃないか？』


達「流石、話が早いな
久しぶりに会うAの実力を
測定して欲しいと言われてな」


『俺に耐えれる測定器があると思うなよ
…ＣＡＤありでの測定でもあるまい』


達「計算上ＣＡＤでお前の力は
１割ほどに抑えている。
その上に手加減して使ってくれているから
壊れていないだけだからな」


『分かっているなら良いだろ
測定不能とでも書いて提出しときな』


どうしたものかと悩んでいる達也を見ると
珍しくクスクスと笑ってしまう


『達也が悩むだなんて珍しい事もあるんだな』


達「俺が悩むのは深雪とお前の事だけだ」


素でそんなことを言うのだから末恐ろしい
気恥ずかしさから頬を染めてしまうも
そっと隠す様に立った

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