うちの過保護な番犬くん (ページ10)

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ヘルパンギーナページ10

樹と再会してから数日が過ぎ、いよいよ明日から樹がクリニックで働き始めるという夜に、おじさんのもとに電話が掛かってきた。

｢もしもし、どうしたの？
…うん、うん。それは全然大丈夫だから気にしないでほしいんだけど、ジェシーくん大丈夫なの？
もしよければなんだけど、明日クリニックに連れてきてくれたら診るよ？
うん……。分かった。
樹くんも身体大切にね。それじゃ。｣

スマホを置いたおじさんは、慎太郎を膝に乗せテレビを見ていた大我くんに話し掛けた。

｢樹くん、明日が初日のはずだったんだけど、ジェシーくんが熱出しちゃったみたいだからお休みするって。
電話で申し訳ないくらい謝られた。｣

へー…謝るべきときでも謝らなかったあの樹が、謝らなくていいときにも平謝りするようになるとは。
人って変わるもんだな。

｢了解。ジェシーくん大丈夫かな？｣

｢結構熱が高いみたいで、明日うちのクリニック受診するって。小児の感染症流行ってるからな。｣

｢やっぱりクリニックにも感染症の子くる？
うちの救急も、夜間に高熱で受診する子結構いるよ。慎太郎とAも気をつけないと。｣

｢いや、流行ってるのは小児の感染症でしょ？私は対象じゃないのよ。｣

｢僕、手洗いうがいしっかりするよ！｣

｢慎太郎｢は｣おりこうさんだね。｣

なぜ慎太郎の頭を撫でながらこっちを見るの？
あと、｢は｣を強調しすぎな。

｢まぁ、主に小児が罹る感染症といえど大人も稀に掛かるからね。北斗がいうように、気をつけるに超したことはないよ。小児に多い感染症って、大人が罹ると重症化するものも多いから。
ってことで、Aも気をつけなね。｣

この心配性親子が。

｢ジェシーが早く元気になるようにお見舞いつくる！｣

｢いいね。何つくるの？｣

｢うーん…おりがみ！みんなで作ろうよ｣

で、元気に折り紙の会の開いてたんだけど…

翌朝、顔を赤くしたグズグズくんができあがっていた。

｢慎ちゃん、のど痛いぃ…｣

少し前に卒業した一人称が再び顔を出すくらいには弱っているみたいで、こっちまで辛くなる。

｢北斗、今日仕事休めそう？｣

｢たぶん頼めば代わってもらえると思う。Aは？｣

｢できなくはないけど、北斗が休めるなら休んでもらえるとありがたいって感じかな。｣

｢分かった。
仕事行くなら、Aも気をつけなよ。具合悪くなったら、無理せず早退して。｣

｢だから何で私が感染した想定なのよ。｣

お母さんがいいと泣く慎太郎に後ろ髪を引かれながらも、私は支度をして家を出た。