4 ページ9
「ただいまー!」
時間的に誰もいないと思った住宅スペースだけど、慎太郎の元気な声を放つと、リビングの扉から大我くんがひょっこり顔を出した。
「おかえり。お客さん?っていうか、さっき面接来てた子だよね?」
「ジェシーだよ!お友達!」
「さっきはありがとうございました。
この子、父親の違う弟なんですけど、慎太郎くんと同じ保育園に通うことになったんです。」
「樹がちゃんと敬語使ってるって、やっぱ違和感だわ。」
「Aちゃんの知り合いなの?」
「2人の関係、話が脱線し過ぎて、結局俺もまだ聞いてないんだけど。」
北斗に言うならともかく、クリニックに就職したら大我くんは樹の上司になるわけで。
大我くん相手に、昔何回も補導しましたっていうのは言いにくい。
「もしかして、元カレ?」
言いにくい元凶はすごく楽しそうだし。
もういっそ、そういうことにして誤魔化しちゃう?
「仮に元カレだったら、確実に俺と期間被ってるから。」
ダメだ、そういうことにすると面倒なのがいた。
「面接のときも少し触れたんですけど、昔ちょっと荒れてた時期に、お世話になったんです。」
すでに話してたんかい。私の気遣いを返して欲しい。ちなみに訂正すると、「ちょっと」ではない。
「にぃにの昔の写真、カッコいいんだよ!
髪の毛ピンクで、ジャラジャラしたのいっぱい着けてるの!僕、黒い髪のにぃにより、ピンクのにぃにが好き!」
「ジェシーのお兄ちゃん、髪の毛ピンクだったの?!
すごい!お父さんも、他の色にしようよ!」
「俺はこのままでいいの。慎太郎とお揃い。」
「えー…それじゃつまんないじゃん!
お母さん、どうやったら髪の色変わるの?」
「毎日毎日、お父さんが自分の頭に、何色になーれって秘密のおまじないをかけるの。」
「そうなの!?お父さん、早くかけてよ!」
「キラーパス寄越すのやめてもらえる?
髪はね、違う色にするお薬をつけると色が変わるの。」
「北斗中学生くらいのころ、金髪にして父さんに叱られてなかった?」
あー、懐かしい。確か私が最初に染めるって言って、北斗も最初は「俺は止めとく」って言ったものの、若干反抗期入ってたからか少し煽ったらコロッと染めたんだよね。
そしてその後、薬剤で私の頭皮がかぶれて、おじさんに診てもらうハメになって、2人仲良く叱られたんだ。
「昔のことなんだから、いい加減忘れてよ。」
お互いに気まずい仲だなんて言ってるけど、拗ねるように口を尖らすのはやっぱり弟の姿だった。
1231人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽん(プロフ) - 続きが楽しみです!更新楽しみにしています (8月8日 21時) (レス) @page7 id: ff3dfdb4f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:いちごじゃむ | 作成日時:2023年8月4日 11時