4 ページ4
｢父さん、いま時間大丈夫？｣
｢30分くらいなら。このあと看護師さんの採用面接あるから。｣
｢なら、時間がないからムリだね。｣
うん、面接に遅れたら大変だもん。
｢北斗、処置的には30分あればいける？｣
｢Aが大人しくしてれば。
結構傷が深そうだし、跡が残るのも心配だから、やっぱり縫合しちゃうわ。｣
｢りょーかい。｣
｢私はりょーかいしてない！｣
え、さっきから私の存在認識してる？見えてる？
北斗はさっさと準備を終えて戻ってきちゃった。
｢父さん、よろしく。｣
｢早く終わらせてやれよ。｣
北斗が消毒綿を手に取ると、さっとおじさんが私の体を固定し始めた。
｢いや、早く終わらせる云々の前にやらなくても！
北斗、ちょっと待って、落ち着こう？一旦。｣
｢Aが落ち着けよ。｣
｢笑い事じゃないって！
顔に注射って普通に考えてヤバくない？｣
｢顔を切られてロクに処置もしないって、普通に考えてヤバくない？｣
真似してんじゃないよ！後ろでおじさん吹き出してるし！しかも微妙に似てるし！
｢時間ないんだから、じゃれてないで早くしろよ。
A、ちょっと麻酔頑張れば痛いの終わるから。｣
｢ちょっと麻酔頑張ればって、その｢ちょっと｣が地獄なんじゃんか！｣
なんて言ってるうちに、体を押さえるおじさんの手に力が入り、顔がヒヤッとしたかと思うと、熱い痛みが来た。
｢はい、麻酔は終わり。後は引っ張られる感覚がするだけだから、目をつぶってな。｣
若干泣いてることを悟られたくなくて、バレないように目のあたりを拭って目を閉じた。
カチャカチャと音がして、顔に変な違和感がくる。
北斗にこうして治療をされていると、初めて出会ってからずいぶんと時間が経ったんだなと実感する。
｢できた。後はワクチンしたら終わりだから。｣
｢いや、さっき麻酔の注射したら痛いの終わりって言ったじゃん！もうしないから！｣
｢あれは縫合についての話ですぅー。早く腕だして。｣
｢しなくてもいけるって。大丈夫！｣
｢A？少しお話する？｣
いや、おじさんのそれ絶対少しで終わらないやつ。渋々諦めて腕を投げ出すしかなかった。
｢お疲れ。これで綺麗に治るはず。｣
｢もー…ほんと疲れた。最悪。｣
｢頑張ったな。職業柄、多少は仕方ないとはいえ、そんなに傷ついて帰ってこられると俺も北斗も心配するんだから、気をつけろよ。｣
｢はいはい。｣
分かってないでしょ、という北斗の言葉は聞き流しておいた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1231人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽん(プロフ) - 続きが楽しみです！更新楽しみにしています (8月8日 21時) (
レス) @page7 id: ff3dfdb4f6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：いちごじゃむ | 作成日時：2023年8月4日 11時
