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「まだ出血してる。
これでよく適当にやるなんて言えたな。」
職場で適当に貼っておいた絆創膏を剥がしながら何やら言っているのは、とりあえず無視しておこう。
「これ、何で切ったの?」
「サバイバルナイフ。まさかそんなもの持ってるとはねー。」
「サバイバルナイフ?!それってちゃんと手入れしてる綺麗なやつ?!」
「んな訳ないでしょ。
もし持ち歩いてるサバイバルナイフをそんなに丁寧に手入れしてたら、余罪洗うわ。」
「冗談言ってる場合じゃない。
感染症の可能性があるかないかの大事なところなんだけど。」
何かあるとムッと眉をひそめるのは、小さい頃からずっと変わらなくて、いたずら心が顔を出す。
「ほっくん、拗ねちゃった?」
「拗ねてない!」
なんてムキになって返すから、子どもみたいで可愛い。
北斗をちょっとからかって油断してたんだけど…
「ちょっと傷口触るよ。」
「いたっ…ストップ!!」
「Aちゃん、あと3秒だけ。1、2、3」
コイツ、仕返しだな?おじさんの口調を真似して、してやったり顔でこっちを見てくる。
「あれ、北斗とAちゃん?あぁ、また怪我したの?」
「大我くん。北斗が大袈裟なだけで、たいしたことないから。ただのかすり傷。」
「不潔なナイフで頬を切られることのどこがかすり傷なんですかぁー?」
「よく言うじゃん。死ぬこと以外はかすり傷。」
「死ぬこと以外全部かすり傷でたまるか。」
「楽しそうで何より。で、傷どんな感じなの?」
大我くんに聞かれ、北斗は気まずそうに視線をずらす。
「傷としてはそこまで深くないけど、まだ出血してるし、場所も場所だから、縫合するか迷ってる。
あと、不潔なナイフで切られたってことで感染が心配。」
北斗、昔は大我くんをすごく慕っていて仲良し兄弟だったんだけど、いつからか微妙に気まずい関係になったらしい。
おじさんと私は、面白い関係だよねーなんて話しているから、険悪な訳ではないんだけどね。
というか待て。いま縫合とかいったか?
「北斗、テープで治る。なんなら唾つけときゃ治る。」
「テープはともかく、唾で治るわけないだろ。感染して化膿する未来しか見えねーよ。
破傷風のワクチンしといた方いいと思う?」
「まぁ、ナイフで刺されたとなると、北斗じゃなくても心配だよね。
今後も怪我する可能性はそれなりにあるし、やっといたら?」
「うん。あ、父さん呼んできて。」
私の意見など入る余地もなく、話が進んでいってしまった。
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ぽん(プロフ) - 続きが楽しみです!更新楽しみにしています (8月8日 21時) (レス) @page7 id: ff3dfdb4f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごじゃむ | 作成日時:2023年8月4日 11時