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「ただいまー。」
うわ、やっぱり北斗の靴あるよ…
「どうしたのその頬?!」
リビングから出てきたと思えば、おかえりの言葉もなく大きな声を浴びせられる。
保育園の頃から一緒だったこの幼馴染み兼夫は、昔から何かあるとすぐに過保護になった。
保育園の頃なんて、一緒に遊んでいるときに私が少し膝を擦りむこうものなら、慌てて医者である北斗のお父さんを連れてきていた。
「大げさだな。物騒な世界で働いてるんだから、こういうことくらいあるよ。」
「そんなこといって。昔からAは無鉄砲なんだから。だいたい…」
「分かった分かった。ごめんって。
北斗も当直明けで疲れてるだろうから、ゆっくり休んでていいよ。適当にやっとく。」
「絶対分かってないだろうし、適当にやっといて良い訳ないでしょ。跡が残ったらどうするの?
クリニックの方行くよ!」
北斗の家は小児科クリニックを開業していて、自宅とクリニックは繋がったつくりになっている。
「大丈夫だよ、大袈裟だな。」
「だから、大丈夫な訳ないって言ってるでしょ!」
次第にケンカのようなやり取りになってきたところで、クリニックに続く扉が不意に開いた。
「なーにケンカしてるの?こっちまで聞こえてるんだけど。」
顔を出したのは、「ゆうごせんせい」と可愛いネームプレートを下げた、おじさんだった。
「あれ、Aまた怪我しちゃったの?
昨日、階段で遊んで怪我した慎太郎の手当をしたばっかりだったんだけどな。
慎太郎も、変なところお母さんに似ちゃったな。」
おじさんがアヒャヒャと笑う。慎太郎は5歳になる私たちの息子だ。
今は北斗の実家で、私たち3人とおじさん、北斗のお兄ちゃんで同じく医者の大我くんと6人で暮らしていて、私たちが2人とも仕事のときは、おじさんと大我くんに慎太郎を見てもらっている。
ちなみに、大我くんはおじさんと同じ小児科の道に進んだけど、北斗は同じ道には行きたくなかったのか、救命救急の道を選んだ。
そういうところがなんだか北斗らしい。
「笑い事じゃないって!顔だよ?顔!
それなのに、適当にするとかいうから。」
「Aも変わんないね。気をつけなよ。
外傷なら北斗の十八番でしょ。処置室にあるもの使っていいから、やってあげな。」
「おじさん!だから、別にそこまでしてもらわなくて大丈夫なんだってば!」
「A。」
普段はニコニコしているおじさんだけど、昔から自分の体を粗末に扱ったときには、トラウマになるくらい厳しく叱られていた私は、条件反射で静かにするしかなかった。
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ぽん(プロフ) - 続きが楽しみです!更新楽しみにしています (8月8日 21時) (レス) @page7 id: ff3dfdb4f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごじゃむ | 作成日時:2023年8月4日 11時