素直になれない理由 2 (ページ9)

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「なんか言おうと思ったけど、俺に彼女おるから言われへんのやろ？」

「……なぁ、前から思ってたんやけど、読心術ある？」

考えてることも思っていることも、筒抜けになっていることが不思議だった。

「おらんし言って」

「いや、おるやん」

「今から別れてくるし」

「やめて？」

そんな話をしていれば、タイミングよく望の携帯が鳴り響いた。画面を見れば女の子の名前で、望はあからさまに嫌な顔をした。

「出ーへんの？」

「出たら行かなあかん」

「行きたくないん？」

相手が彼女だとすぐに分かった。なのに望は気が重そうで。

「Aとおる方が楽しい」

「何それ」

「Aと高校生やり直したい」

「やめて、言わんといて」

私が蓋をして隠してきた思いを、望がどんどん言うから抑えきれなくなる。

「A、俺」

「ここにいたー！」

望が言いかけた言葉を遮るように、教室のドアがガラッと開く。

髪をフワフワに巻いて、短いスカートから白い足が伸びていたその子は、今時の女子高生だと思った。

「なんで電話出てくれへんのよー」

そう言いながら、教室に入ったその子は私をチラッと見ると、あからさまに嫌な顔をした。

「誰この人」

「あ、1年の時小瀧くんと同じクラスやって、たまたまここで会っただけやねん」

小瀧くん、なんて呼んだこともないのに。嘘くさい笑顔を作って席を立った。

「ほんじゃ、私帰るから」

うまく笑えてるか不安だった。
逃げるように教室を出た私は、せき止められていた涙がやっとこぼれ落ちた。

なんの涙かは分からなかった。
久しぶりに話せた嬉しさ。卒業する寂しさ。もう会えない苦しさ。彼女がいるもどかしさ。

とにかく家まで走った。
涙が乾くようにと全速力で走った。

「(終わった…)」

私の思いも、願いも、青春も、高校生活も。

全てのしがらみから、卒業できますように。

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