素直になれない理由 2 (ページ5)

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「さっきさ、女の子から連絡先聞かれてたやろ」

「あ、やっぱ見てたん？Aみたいな人がいるなって思ってた」

「え、見えてたん？恥ずかし」

隠れてたつもりだったのに。携帯に登録ができると、すぐにメッセージを送る。

「お、届いた」

嬉しそうに自分の携帯を見つめる望。

「けど俺、誰にも教えてへんからな」

「え？」

「携帯忘れたフリした」

心の中でガッツポーズをする自分を隠すように、何でもない素振りをする。ふーん、なんて。舞い上がる自分を抑えようとしていた。

けど、望は何でか、それにも気づいてしまう。

「にやけてんで顔」

「え、嘘？！」

「嘘ぉ」

「なんなん？」

そうやってすぐからかうのは、望の得意分野だ。
揚げ足とられてるのに、望の笑った顔を見ると、許してしまう私も仕方がない性格だと思う。

「今度、菜々が結婚するって」

「俺にも招待状きたわ」

「え、何で望に招待状くるん？」

「相手の人がサッカー部の時の先輩やから」

なるほど、と納得をした。
高校の頃、私のことをそばで見守ってくれた大事な友達。結婚するって考えただけで既に泣きそうになる。

「そろそろ仕事戻らんとやろ？」

望の一言で現実に戻る。残業が残ってるんだった。

「はー戻りたくない」

「意外と積極的やな」

「そういう意味ちゃう」

「素直ちゃうなー」

「なんなん」

エレベーターまで望を送ると、私も自分のフロアに戻った。ポケットの中で震えたスマホを見れば、“頑張れ”と望からの通知。

「A、にやけてんで」

「にやけてません」

濱田さんはぬかりない。

「俺のコーヒーは？」

「あ」

望に奢ったコーヒーは、濱田さんのお金だったことに、そこでようやく気がつく。
そっちのおつかいのことをすっかり忘れていた。

「濱田さんのお金で、他の人にコーヒー奢ってしまいました」

「おい！！」

素直に謝る私に「もぉー」と言いながら許してくれる優しい先輩。

残業も頑張れそうだな、と気合を入れた。

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