素直になれない理由 2 (ページ21)

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「俺が付き合っている人はAさんじゃなくて、こっちの沙希ちゃんですよ」

「へ、」

松野さんの表情が固まった。

「え、Aさんじゃないの…？」

「俺、きちんと彼女のこと大切にしたいと思ってます。不安にさせたくないから、こういうことは控えていただきたいです」

藤井さんが、沙希の肩にそっと手を置いて寄り添ったけど、その沙希は突然のことに唖然として言葉が出ない様子だった。

私はなんだか嬉しくて、思わず笑顔になってしまう。

「あ、おった！Aさん！」

遠くから呼ばれて振り返ると、中間さんが走って来ているのが見える。

近くまで来た中間さんは息を整えながらも、松野さんがいることに気がついた。
この状況と空気を読み取ったのか、ニヤッと笑う。

「朝言ってた、AさんのPCデータを消した人、割り出せたわ！」

その言葉に松野さんが顔色を変えたのは、言うまでもない。沙希も何か言いたげに私の顔をすぐさま見た。

「これ、昨日のフロアの入室歴まとめたやつと、PCの最終起動時間の記録。それから監視カメラの映像はこっちのUSBに入れといたよ」

「こんなに早く…」

「まあ、早い方がいいかなと思って」

「ほんとにありがとうございます」

私が資料を受け取るのをジッと見つめている松野さん。
沙希は痺れを切らして、小声で“どう言うことなの”と耳打ちしてきた。それに答える間も無く、中間さんが続けた。

「それにしても、」

少し大きめな声に、みんなの注目を集める。

「めちゃくちゃ綺麗に映ってたよ、松野さん」

その瞬間、ロビーで事を見学していた野次馬含め、一斉に彼女の方に視線が集まった。

「っ、えっと…」

当の本人は愕然として、言葉を見失っている。

中間さんを見ると、ウィンクで目配せをしてくれた。
思わず綻ぶ頬を隠せない。最高に清々しい気分だ！

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