素直になれない理由 2 (ページ14)

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ーWednesday 10:00

「濵田さん会議室押さえました」

「よぉーし準備万端！」

10時半よりジャニストコーポレーションとの合同会議がうちの会社であり、午後からは別件の取引先と打ち合わせという本日のハードなスケジュールに気合いが入る。

「資料忘れてます！」

愛美ちゃんの言葉に、ハッとした濵田さん。

「全然準備万端ちゃうかった」

しっかりとうっかりが共存するのが濵田さんの魅力だと受け止め、慌てる彼をそっと見守った。

鳴り響く電話と、フロアに出入りする社員。相変わらず忙しさだけは伝わってくる。

「お世話になってます。本日はよろしくお願いします」

お客様がみえたことに、フロアにいた女子が騒がしさで気がついた。何人かの中に藤井さんが見えて、小さく会釈する。

濵田さんが会議室まで案内するのを見届けた。
私の仕事はここまでで、あとは濵田さんと企画部、営業部の担当が進める予定になっている。

少しバタバタの空気が落ち着いて、息を吐いた。

今のうちにトイレにでも行っておこう。会議が終われば、報告を聞きながらのランチミーティングになるんだし。

「ねぇ、見た？藤井さん！」

「見た見た！今日もほんとかっこよかった～！」

「私さ、会議終わったら思い切って連絡先聞いてみようと思うんだけど！」

「うそ！彼女いるって噂だよ？」

「だって黙って見てられないんだもん」

トイレの個室に入ればそんな話が耳に入り、心なしか心拍数が上がったように感じる。

そもそも、イケメン揃いだってプロジェクトが始まる前から騒がれていたし、ファンが何人いたっておかしくないか。

声が遠ざかるのを待ってから個室を出ると、同じタイミングで、隣の個室が開いた。

「あら偶然ね、A」

出てきたのが沙希だったから目を見開いてしまった。修羅場に立ち会ったような気分になる。私が動揺したところで意味はないんだけど。

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