素直になれない理由 2 (ページ13)

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「…望が何が言いたいのかイマイチ分からん」

「なんっでやねん！」

「声でか」

私の一言で、また望が声を張る。

「やからぁ！」

望の声のボリュームは下がらないまま。

「俺とAは付き合ってるんやろ？！」

その言葉で、やっと望が伝えようとしていることに気がついた。
途端に心拍数も体温もどんどん上がるのがわかる。熱い。苦しい。やばい、にやけそう。

「そうやったんか」

「いや、わかるやろ」

「いつから？」

「キスしたあの日からや！」

もぉー！と打ちつけどころのない苛立ちを声にする望。だから怒っていたんだ。だから佐々木さんに牽制してたんだ。

「わかってへんかった」

「せやろと思ったわ！」

なんだ。そうか。

自分の心が軽くなるのを感じた。ふわふわした感覚が襲う。

私、嬉しいんだ。

「望、ごめん」

望の立場になれば、私の行動は悪いことをしてしまっていたな。

私が申し訳なさそうに下を向いていたからか、望は「あーもぉ！」と声に出すと、私のおでこにチュッと音を鳴らした。

「許す！」

ニッと笑った望の顔が優しいオレンジ色だった。

その笑顔のせいで悔しいくらい愛おしい気持ちに襲われた。

帰りの新幹線では爆睡の望の横で、結婚式の写真を見返していた。幸せそうな菜々の笑顔に、私まで幸せになる。

“今日はきてくれてありがとう”

ちょうどそのタイミングで連絡が来た。慌ててアプリを切り替える。

菜々とゆっくり話ができなかった分、たくさん撮った写真を送りつけた。
もう少ししたら、帰省して菜々の家でもいこうかな。

“Aも小瀧と仲よさそうでよかった～香織と小瀧が喋ってたから復縁するんかなって一瞬思ったわ！”

「ん？復縁？」

引っかかる文面に、素直に返信する。

“高校の時、香織と小瀧付き合ってたん知らんの？有名やったやん”

知らなかった。だからあんな親しそうに呼び合っていたんだ。モヤっとするものの、まあ昔の話だからと自分を納得させる。

“そういえば、香織も上京してたはず…そのうちそっちで会うんちゃう？”

「…嘘でしょ」

納得させたはずのモヤモヤが、自分の中で広がって行く。嫌な予感しかなかった。

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