素直になれない理由 2 (ページ11)

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香織と呼ばれたその女性は、親しげに望と話す。

どこかで見たことあるなと思えば、クラスは違ったが、学年で一番美人だと騒がれていたマドンナ的存在だった子だと思い出した。

「今何の仕事してんの？」

「リーマンや」

「えー、そうなん！」

私のことなんて眼中にないように話は盛り上がる。そしてマドンナだけあって、美男美女が並ぶと絵になるな、とため息がこぼれた。

「あ、二次会まで時間あるしお茶でもせーへん？」

香織ちゃんはそっと望の腕に触れる。
望は私のことをチラッと見た。

「あー、俺、」

「いいで、行ってきて」

気を使われるのが嫌で、望の言葉を聞く前に自分の口が動く。

「私も久しぶりに友達と喋りたいし」

望はムッとした。怒らせているのは私だろうか。
と思いつつも後戻りができない私は、その場を離れる。

ロビーに行けば高校のクラスメイトに会った。久しぶり、なんて会話を交えて、菜々の結婚式の話題でひとしきり盛り上がる。

「そういえば、Aちゃん小瀧くんと一緒に来てたんやな」

「そやねん」

「高校の時、2人が一緒にいる記憶あんまりないかも」

「んー、高校は仲良くなかったかな」

一緒にいない時間の方が長すぎて、私と望が幼馴染だということを周りは知らない様子だ。

「え、そうなん？うち、小瀧くんと同じクラスなったことあるねんけど、よくAちゃんのこと見てたで」

「え、何それ」

「窓の外見てると思ったら、校庭にAちゃんおったり、廊下で携帯いじってると思ったら、Aちゃんが重い荷物運んでるん、落とさんか心配そうに見てたり」

こういう話聞くと、自分の心臓が厄介な事になる。

ゆっくり息を吐いて、鼓動を落ち着かせようとした。それから、いつもの何でもないふり。

「こわっ一歩間違えればストーカーや」

ヘラヘラ笑ってごまかしていると、

「誰がストーカーやねん」

後ろから望の声。香織ちゃんと一緒だと思っていたから、びっくりして振り返る。

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