２６８Q ページ31
Aside
「俺の、兄です」
「それはリコから聞いた」
では、それ以上何が聞きたいのだろう。
もし蘭の実力について聞きたいのなら、俺はわからないとしか答えられない。
蘭の強さは映像で見てもらったものがすべてだ。
本気を出さず、器用に上手くプレイする。天才。
「…残念ながら、弟の俺でも蘭のことはわからないんです。ただ家では俺をよくパシったり、ぐーたらしたりするダメ兄貴ってことくらいしか…」
「違う、俺が言いたいのはお前にとって…アイツはなんだって、ことで、だな」
ガシガシと頭を掻く景虎さんは、俺に遠慮しているのか言葉を選んでいるように見える。
言葉が上手く出てこず、うぅんと唸っている。
が、それなら最初に言った通り、蘭は俺の兄でそれ以上でもそれ以下でも…ない。
いや、違うな。
もしかして景虎さんは俺の、誰にも言ったことのない隠し通してきた汚いモノに触れてこようとしたのか。
「なんでそんなこと聞いてくるんですか」
思ったよりも低く、冷たい声が出てしまった。
人には他人に触れられなくないもの、一つや二つあるモノだ。
その一つが、俺にとってはこの兄弟の…兄弟の差というわけで。
「…俺は、お前が感情的になるタイプではないと聞いてたんだが」
「……」
「実際にそうだろ、俺にもそう見える。ただしテメェの兄が関わったら話は別だ」
「…だから、なんで」
「わかってんだろ。チームが勝つためだ」
頭を掻く手を止め、ジッと俺を見つめる景虎さんから咄嗟に俺は目線を横へずらしてしまった。
誠凛が勝つために、俺の汚いところに手を突っ込んできたと。
「映像見てわかるが、明らかに長崎蘭を前にしたお前は取り乱してんだ。パスはガタガタ、ディフェンスも腰が引けて抜かれてる。あれがお前の実力か？」
「……ぃえ」
小さく返事をする俺へ一歩、近づいてくる景虎さん。
情けないな、俺ってば他の人から見てもそんなダメダメだったんだ。
恥ずかしくてぎゅっとＴシャツの裾をつかむ。
「兄貴が恐ぇのか」
「…いえ」
「嫌いか」
「……いえ」
景虎さんの質問一つ一つを否定する。
そうじゃない、そうじゃなくって、ただ。
「ただ、越えられないだけで」
ぽろりと心の中で押さえていた本音が漏れた。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1377人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こたきんぐ(プロフ) - しゅるさん» だーすんごい嬉しい反応貰っちゃったへへ！！ありがとうございますっっこれからもたまに漂う幼馴染み臭を楽しんでもらえたらいいなって思います！ (2023年2月6日 19時) (
レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
しゅる - あばーー！！かっこよすぎるよ！主くん！！幼馴染みのきーちゃんと似たような感情で、似たような台詞で、似たような場面で！！幼馴染み最高！！やばすぎる…！ (2023年2月5日 19時) (レス) @page49 id: 29acc038ba (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - にゃん太さん» ですよね！？マジで永遠に畑耕して牛達の世話してます笑笑 わ〜ほんとですか！！貴重だ〜！！ありがとうございます、マイペースですが頑張ります！！ (2023年2月5日 9時) (レス) id: 3b9b192a4a (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - らぶさん» おお！？蘭推し嬉しいです！！蘭の心情もいずれ書こうと思ってますので…🤗ありがとうございます、頑張ります！ (2023年2月5日 8時) (レス) id: 3b9b192a4a (このIDを非表示/違反報告)
にゃん太(プロフ) - 牧場物語が面白すぎるのまじでめっっちゃわかります！！！！実は初期の頃から読ませていただいていたりします。ず〜〜っと大好きな作品です！作者様のペースで頑張ってください！！！！ (2023年2月5日 6時) (レス) @page49 id: e8e9837ec5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こたきんぐ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時：2020年5月24日 10時
