検索窓
今日:11 hit、昨日:36 hit、合計:304,459 hit

32 ページ33

.


私はサンドイッチの乗った皿をリビングにあるテーブルに置いて、洗濯アイロンした安室さんから借りたハンカチを手に取った。

またパタパタとスリッパを鳴らして安室さんが待つ玄関まで急ぐ。



「これ、返すの遅くなってごめんなさい、ありがとうございました!」

「いえ、どういたしまして。…その、風邪でもひかれましたか?」



彼はハンカチを受け取り、自分の頬を指さす。
私のマスクに対して言いたいのだろう。

ただマスクしているだけならまだしも、その隙間から見える肌と目は病人もの。
肌は青白くほんとに血が通ってんのかと言いたくなるし、目の下にある青い隈は恥ずかしいほどにくっきりだ。

それにマスクしてるのはスッピンでひどい顔だから。



「風邪とかじゃないので大丈夫ですよ!」

「…寝不足、疲労、栄養失調」

「安室さん?」

「ダメですよ、体に無理さしちゃ。いくらお仕事が大変でも休憩は大切です」



安室さんは少し怒ったように手を腰に置いた。探偵()には分かるようだ。

いつもの優しく笑って下がる眉が、ややつり上がっており、あぁ心配してくれているんだと不謹慎ながら思った。



「そうですよね、体壊しちゃ元の子もないですもんね。安室さんにもらったサンドイッチ食べながら、少し休もうと思います」

「そうしてください。Aさんはよく頑張る人なので、無理しすぎて倒れそうで心配だったんですよ」

「は、はは」



乾いた笑いしか出てこない。

よく頑張る人、無理しすぎる人、無謀な人。たぶん前の爆弾解体の時のことを思い出しながら言われてるのだろう。

でも心配させてしまったのは変わりない。
人様に心配されない程度に頑張ろう、仕方なしに無理する時もバレないように、なんて。




「僕にはすぐ分かりますからね」

「へ?」

「無理したら、です。
僕は探偵、お隣さんの異変に気づかないほど鈍くありません」




ぽん。

なんて、どこぞの少女マンガの切り取りだろうか。

安室さんは私に目線を合わすため少しかがみ、私の頭を優しく撫でた。
遊園地の帰りの車でも、撫でてもらった記憶がある。
ある、けど、今回は何だか違う。


何が違うかとかは具体的に説明は出来ないけど、あの場のテンションのこの場のテンションでは違うってこと。



.

33 ご褒美だって→←31 急すぎる差し入れ



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (527 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1594人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- すっごく面白いです!続き楽しみに待ってます! (2021年12月12日 8時) (レス) @page38 id: 1125244af9 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぱるむさん» 流れは一通り書いているのですがちゃんとした文字に起こすのがすごく手間取っていまして…、ぼちぼち頑張っていきたいです!ありがとうございます! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - アイスあるさん» ありがとうございます!!返信遅くなってごめんなさい、マイペースですがぼちぼちやっていきます! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
ぱるむ - 復活待ってます!すごく面白かったです! (2021年2月15日 18時) (レス) id: 4fbbe91aff (このIDを非表示/違反報告)
アイスある - めっちゃ面白いです!更新頑張ってください! (2020年5月27日 18時) (レス) id: 38b2fa8d4e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/  
作成日時:2019年9月6日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。