ゼロから始める関係性がいい。【安室透】

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Aside


まあ私がとやかく言っても、今の安室さんが聞いてくれるとは思っていない。

だから私達は今、オシャンティな地下にあるバーに来ている。




「…いつになったら帰れるんだろう」

「さあ、いつでしょうね。
とりあえずお酒を楽しみましょうよ。ベロンベロンに、酔うくらいに」




ニッコリと笑う安室さんの心情が微かに伝わってきた。

とりまあれでしょ、ベロンベロンに酔わせて今日の記憶忘れさせたいんでしょ。


ごめんなさいね、私そんな可愛い女の子じゃないからそうそう酔わないのよ。




「すみません、バーボン二つ。ロックで」

「こいつ本気でやりに来てる」




安室さんは私がカウンターに座ったのを確かめると、マスターと思われる人に注文を頼んだ。


バーボンはなかなかアルコール度数が高い。

安室さんは本気で躊躇なく、私を酔わせに来てる。




「そう言えば、まだ名前を聞いてませんでしたね。お名前お伺いしても？」

「…石川、Aです…」

「へぇ、Aさんって言うんですね」




整ったベビーフェイスが、私の顔を覗く。

やめてくれ、なんやかんやで心臓がもたないんだ。
いろんな意味でね。




「改めて、僕は安室透です」

「はい、そうですよね」

「Aさんはクールなイメージがあったんですけど、結構面白い方ですね」

「あっはは、笑っちゃう」




目を死なせながら笑っていると、マスターがバーボンロックを二つ、出してきた。

…いっその事忘れてしまえ。


覚悟を決めたらいざ、グビッと一気にコップ一杯飲み干す。




「…うわぁ、いきますねぇ」

「っくはぁ…。…まだ、酔えねぇ。っていうか飲ませてる安室さんが何で引いてるんですかぁ！」




良い子は真似しちゃいけない一気飲み。

特に若い子はしちゃいけないよー、ていうか未成年は飲んじゃいけないからねぇ。
一気飲みしてアルコール中毒になって死んじゃうとかあるからさ。

…何の話をしてるんだろう。もう、ちょっと酔ってるな、はっは。




「今日は、誰の奢りすかぁ…？」

「…ふっ、僕です」

「ありしゃーっす！マスター次はスコッチ水割り！」

「…」




かしこまりました、というマスターの声を聞いて、私はぼーっとカラになったコップを眺める。


ああ、今日は何もかも忘れてやりたいな。


.

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