ゼロから始める関係性がいい。【安室透】

１９から ページ21

Aside


「…僕、そんなに怪しいですか？」

「じゃあ逆に聞き返しますね。私そんなに怪しいですか？」



貴方が私を怪しんでいるのと同じくらい、私も貴方を怪しんでいると思ってくれてもいい。

私達は真っ暗な路地裏で二人、突っ立ってお互いのボロを出すのを待っている。

いやほんと、イケメンのお顔が台無しな程に圧が怖い。思わずそのまま尻餅ついちゃいそう。




「…本当に、すみません。Aさんには不快な思いをさせたみたいですね。これ、『君ラック』のチケットです」




あっさりと私の手の元へやってきた『君ラック』のチケット。

…安室さん、それはいけないんじゃないかな。

それは、貴方が言えないことがあるから、怪しい事があるからさっさと逃げるために私に素直にチケットを譲ったんでしょう？

だってさっきまで頑としてチケット譲ってくれなかったじゃないですか。


けど、私はこれ以上関わりたくないので何も言わない。




「…ありがとうございます。…あれ、二枚あるんですか？」

「はい、ぜひお友達と行って楽しんできてください」




私の自意識過剰だろうか。

下手したら一緒に行きましょうとか言われてた？

やーん嘘嘘やめてー。想像怖いぞAー。




「マジで感謝します。…もう、すぐに家ついちゃうんで、ここで帰ってくれてもいいですよ」

「しかし…」

「近いんです。気にしないでください」




それではご馳走様でした、と言って私は早足で路地を抜けた。



本当に、一瞬の出来事だった。


路地を抜けた瞬間、何者かにグッと引き寄せられた私の体。

それは路地から伸びた手じゃなくて、路地を抜けた先から伸びた手。


ということは、安室さんがわざわざ追いかけて私の手を掴んだわけじゃないってことだ。




「へっ、」

「スキありぃ？」




振り向くとそこには、ニタリと怪しい笑みを浮かべた男の姿があった。

叫んでいいですか。


待ってごめんなさい、なんか叫べない助けて。


.

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