*ﾟ*金魚花火20*ﾟ* (ページ25)

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【５６９】side O ページ25

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智「じゃあ、抱きしめてよ」

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震えるな、声。

弱い所なんて見せられない。Aが、好きだ。

おずおずと、遠慮がちに背中に回される細い腕が愛おしい。

本当はずっと気付いてたよ。俺のこと、ちゃんと好きになろうと頑張ってくれてた。

それじゃ物足りないと喚いて、一番傍で守ってるように見せかけて

一番負担をかけていたのは、俺なんだって。

優しさに付け込んでいたのは、俺なんだって。

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智「あげたくないなあ……」

A「智さん？」

智「傷付けてもいいから、手元に置きたい。

嫌われてもいいから、ずっと愛していたい。

………自由を、願っていたはずなのに。君が自由に生きられますようにって

なのに愛ってのは、窮屈だね」

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たとえば抱きしめあうという行為さえ、とても窮屈で

お互いの自由を奪う行動だ。

口付けは互いの呼吸すら奪う。人を愛し、愛されるということは

自由とは最も無縁の、がんじがらめの束縛だ。

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智「優しくなれるわけがない。そんな余裕どこにもないぐらい、好きになってしまうのが恋」

A「だけど幸せだった」

智「………」

A「智さんとの恋は、幸せだった。

きっとこれからも……前みたいに、幸せに…」

智「ありがとう」

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Aを抱きしめる腕を解いて

精一杯の笑顔をあげる。もう、あげられるものが他にない。

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智「俺も幸せだったよ」

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好きだ。好きだ。大好きだ。

だから俺は、こうするしかなかった。

負けたくなかったから。Aをこんなに好きなんだって気持ちで

負けたくないと思えてしまったから

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「―――なあ、A」

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足音を忍ばせて、この部屋までやって来たその気配には気付いてて

わざと抱き合う姿を見せつけてやったんだ。

勿論―――宣戦布告のつもりだった。

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和也「煙草(おつかい)、頼まれてくれる？」

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受けて立つよ、和也。

今、俺の目の前で一瞬にして彼女を泣き顔に変えてしまった

お前相手に、絶望的な勝負だと知りながら。

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『金魚花火』part 20 end