*ﾟ*金魚花火20*ﾟ* (ページ23)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:286,001 hit

【５６７】side O ページ23

・

・

和也「……めんどくせえ」

智「………」

和也「智ってそんなに、めんどくせえヤツだったか？」

・

・

和也は俺に近付いてくると

眉をひそめて、いかにも不満げな顔で

・

・

和也「一番、捻くれてないと思ってたけど」

智「捻くれてない？」

和也「いつまで経っても昔のこと引きずってた俺とか雅紀とか翔ちゃんとか潤くんとか

俺たちと違って、お前すげえ淡々としてたじゃん。兄貴のことにしても、志摩子のことにしても、自分の抱えた過去にしても

影響されないヤツだと思ってた」

智「………似たようなことを、つい最近翔ちゃんにも言われたよ。俺も人の子だったんだって」

和也「言い得て妙だな」

智「………―――え」

和也「………」

・

・

ちょっと、待て。

・

・

智「思い、出してるのか……俺のことだけじゃなくて……」

和也「………うん」

・

・

それは、大きな衝撃だった。

ここにあの子を通わせなくなってから、確かに情緒が安定してきているとは思っていた。

・

・

智「いつからだ。いつから、思い出した」

和也「お前がもう会わせないって宣言したじゃん」

・

・

す、と俺に向かって手を出す。意味が分からずに戸惑う俺に

「煙草」と短く彼は言った。

・

・

和也「あの日の夜から、だんだんとね」

智「そんな素振り、見せなかった」

和也「その方が、智が楽かなって」

智「俺が？」

和也「何もかも、あいつのことも忘れたまま死んだ方が

お前にとっては罪悪感が軽減されんのかなって考えてた。でも」

・

・

和也は、胸のあたり。自分の服をぐしゃと握りしめる。

・

・

和也「苦しいんだわ、すごく」

智「和也……」

和也「ごめんな、智。最後まで黙っていてやれなくて、ごめん。

だけどこんなにも強く死を意識した時に

やっぱり会いてえなって思うんだよ。あいつが言うように、本当に一夏だけしか残ってない。

それにお前が殺さないって言うから。生かしてくれるって、言うんなら」

・

・

手を下ろす。俺が煙草なんて持ってないと気付いたからだろうか。

・

・

和也「勝負がしたい。お前と、真正面から」

・

・

・