*ﾟ*金魚花火20*ﾟ* (ページ11)

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【５５５】ページ11

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―――その瞬間の笑顔を、私は一生、忘れないと思った。

嬉しそうに、誇らしげに笑う和哉を見て

私は、上手くいったんだと悟った。

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志摩子「その様子だと、ようやく交渉成立？」

和哉「ああ」

志摩子「全く……２番隊隊長、銀縁のカズヤなんて崇められてたくせしてこんなに手こずるなんて

実は和哉、たいしたことなかったんじゃないの？(笑)」

和哉「お前な～(笑)」

志摩子「良かったね、和哉。本当に……良かった」

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茶化して言わなければ、泣いてしまいそうだった。

そんな私の気持ちに気付いていた和哉はそっと、ふわりと私を抱きしめた。

何度も、何度も、頭を下げた。沈みゆく船に投資しようという変わり者は、ただでさえ少ないのに

尾張組との縁談がなくなったことで、しかもその原因ともいうべき和哉を前にして、罵声を浴びせる者が大半だった。

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和哉『翔(アイツ)は、頭がいいんだよ。

このままで終わらせるなんて勿体ない。あいつはもっと学ぶべきなんだ』

志摩子『龍村組の将来のために？』

和哉『龍村組じゃなくても、いい。守るべきものを、守るために……』

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自分に惚れこんで龍村組の門を叩いた弟分のことを放り出して、私と生きることを選んだ

そんな和哉に金龍が命じたのは「責任を取れ」。その一言だったという。

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和哉「恨んでるんだろうな、俺のこと」

志摩子「……恨まれるのは私だけでいいのにね。最後まで、和哉は翔の兄貴分であろうとしたこと

本人が知ることはないんでしょうね……」

和哉「仕方ないな、俺も志摩子も組からすれば裏切者なんだから。だけど」

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そこで言葉を切って、和哉は私を離した。

私を抱きしめている間も、潰さないように。すごく気を遣っていたことは、当然私にも分かっていた。

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和哉「この子は、そうじゃない」

志摩子「和哉…」

和哉「A。誰にも後ろ指さされることなく、健やかに育ちますように」

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私の腕の中、あぷ……と声を上げた赤ん坊に

和哉は優しく笑いかけていた。

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〝君のことも、君のお母さんのことも、俺が守るよ。愛してる”

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………ええ、そうね。

愛してる。私も、和哉のことを。

そして―――娘のAのことを。

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