笑ってくれるなら ページ3
Ryusei.
「檜山くん、おはよう」
檜「……」
「起きれそう？手貸すよ？」
檜「ｺｸｯ…」
いつからだったかな。
檜山くんは笑えなくなって、会話も
なかなか出来なくて、反応してくれる
ことだけが不幸中の幸いって感じ。
簡単に言えば「ストレス」。
中を見ればもっと色々あるんだけど
頑張り屋さんな檜山くんは1人で
頑張りすぎちゃったみたい。
「檜山くん、朝ごはん食べる？」
檜「ｺｸｯ」
「じゃあ用意してくるから待っててね」
もう何ヶ月檜山くんの声聞けてないかな。
そんなことを思いながら朝ごはんを用意
していると、後ろから抱きしめられた。
「檜山くん…？」
檜「…」
なにも言うことなくただぎゅっと弱い力で
俺を抱きしめてくる。どうしたんだろうって
思ったけどあえて用意を進め続けた。
「もうちょっとでできるよ〜」
そうやって声掛けてみたら俺の肩から
ひょこっと顔を出してフライパンを除く。
その姿が最近では見ない檜山くんでなぜか
少しだけ泣きそうになった。
朝ごはんを食卓に並べて2人で座って
いただきますをして食べ始める。
「いただきます！」
檜山くんはただそのご飯の乗ったお皿を
眺めてぼーっとしている。いつも通り。
すぐには食べれないみたいなんだよね。
でもこの日はちょっと違った。
檜「りゅせ…」
小さい声だった。消え入りそうなくらい。
だけど確実に俺の名前を呼んでくれた。
嬉しくて嬉しくて、でもわざと大きくは
喜ばなかった。
「檜山くん…？」
檜「ありがと…いつも」
「俺がしたくてやってるんだよ？」
檜「それでも…ありがと」
こうなってからずっと聞けなかった声。
そして少しだけ明るくなった表情。
それがたまらなく嬉しかった。
「今日さ、海行かない？」
檜「うん、行く」
ってちょっとだけ笑顔を見せてくれた。
ちょっとずつだけど檜山くんも前に進んで
変わろうって思ってるんだって思って。
俺がその笑顔になる理由になれるのなら、
また最高の笑顔を見れる日が来るのなら、
俺はずっとそばにいてあげたいな、なんて＿＿
end．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 119人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：叶愛 | 作成日時：2022年9月10日 11時
