好きになってくれる人 ページ14
Kosei.
「あのさ、好きって言って？」
深「好き、大好きだよ？檜山くん」
「…俺も大好き」
愛され方なんて俺には分からなくて。
家族にも、周りにも愛されたことなんてなくて。
竜生が毎日こんなに伝えてくれる「好き」もどこか不安に思ってしまう自分が嫌だった。
深「今日はお母さんいるの？」
「あー…うん、まぁ…」
深「そっか…なんかあったら電話してよ？」
「分かってるよ笑」
家族とは関係が良いとは全く言えなかった。
もちろん愛されたことなんてないし、そもそも見向きもされない。家族が見てるのは兄だけで。
なんでも出来る兄と比べられて嫌な顔をされるだけ。
「ただいま」
いつもよりも重たく感じる扉を開けて家に入る。
するとリビング聞こえてくる話し声。
別に聞く必要も無いのに、なぜか聞き耳を立ててしまった。
母「なんであの子はなにもできないのかしら」
父「さぁ…なんでだろうな」
母「あんな子、生まれてこなきゃ良かったのに」
聞こえてきた言葉にスーッと体温が下がる感覚。
はっきり言われたこと無かった言葉。いつか言われるかもしれないと覚悟はしていたのにいざ言われると苦しくて仕方なくて。その場に立つことさえ息苦しくて急いで家を飛び出した。
「はぁ…はぁ…」
溢れ出る涙は止まらなくて。
追い討ちをかけるように降り出す雨が嫌な気持ちごと全部流してくれたらいいのにって回らない頭でそんなことばかり考えて。
誰が俺を愛してくれるんだろう。
こんな俺を誰が、誰が好きになってくれるんだろう。
胸が苦しくてたまらなくて溢れ出る涙も降り続ける雨も気にせずその場にしゃがみこむ。
深「こんなところにいた」
「……え？」
急に雨が遮られて、声が聞こえた。
振り向くと優しく微笑む竜生がいて。
「りゅ…せ」
深「おいで？」
そう手を広げる竜生に思わず飛び込んだ。
竜生の体温と、ぽんぽんと俺の背中をたたいてくれているその手が暖かくて。苦しくて。
次から次へと溢れ出る涙が止まらなくて。
深「檜山くん？俺は檜山くんのこと大好きだよ」
「……うんっ」
深「檜山くん、生まれてきてくれてありがとう」
「っ……」
深「俺に愛されてくれてありがとう」
「りゅうせっ……」
深「…光成が生きててくれて良かった」
「……俺もっ」
大丈夫。俺を好きになってくれて、愛してくれる人。
ちゃんとすぐそばにいるんだから＿＿＿＿＿
end.
終わり
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作者名：叶愛 | 作成日時：2022年9月10日 11時
