弱い所は俺だけに ページ1
Ryusei.
＿＿りゅうせい…っ
そう苦しそうに俺の名前を呼ぶ檜山くんは
俺の知らない檜山くんだった。
檜山くんは年齢よりも落ち着いていて
大人びて見えるとよく言われている。
それは俺らも感じていて頼りになるし、
いつも余裕を持っているように見える。
でも意外とそうじゃなかったみたい。
あるレッスン日。みんなが帰った後、
忘れ物を取りに稽古場に戻った。
「あれ、檜山くん…？」
誰もいないはずの稽古場に電気が付いていて
中を覗くと檜山くんが1人で練習していた
「檜山くん、帰ってなかったの？」
檜「あ、竜生。まぁ…ちょっと。」
暗い顔で俯きがちになってしまった檜山くん
そんな様子は珍しく思わず抱きしめてしまった
檜「ちょ、竜生っ？なに？」
「なにかあったならちゃんと言ってよ」
檜「っ……」
「1人で悩んで、1人で頑張ろうとしないでよ」
檜「……りゅうせい…っ」
苦しそうに俺の名前を呼んだ檜山くんは
少し肩を震わせながら遠慮がちに俺の体に
手を回してくれた。
檜「ダンス…もっと上手くならなきゃなのに」
「うん」
檜「みんなに追いつかなきゃなのに」
「うん」
檜「何度やっても上手くいかなくて…」
「そっか。檜山くん、今辛い？」
檜「…うん。足でまといになっちゃう…」
いつも冷静で凛としている檜山くんからは
想像がつかないくらいには弱っていて、
泣いているその横顔はあまりにも幼く見えた。
「俺は檜山くんはめっちゃ頑張ってると思う」
檜「でも…」
「ダンスだってかっこいいし、見せ方もすごく上手い。でも檜山くんが納得いかないなら納得いくまで俺が一緒に練習するから」
檜「一緒に…」
「俺、後輩だけど年上だよ？頼ってよ」
そう言いつつ檜山くんを抱きしめている力を
少し強めると同じように俺を抱きしめている
力が少し強くなった。
「俺だけにでも頼ってほしいな…なんて」
檜「うん…ごめん。」
「ありがとうの方が嬉しい！」
檜「あり…がとう…」
「うん、どーいたしまして」
初めて見た檜山くんの弱くて脆い部分。
頭を撫でながら落ち着くのを待っている中、
やっぱり檜山くんは年下なんだって思った
その弱くて脆い部分を、俺だけには
見せてもいいんだよ＿＿
end.
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作者名：叶愛 | 作成日時：2022年9月10日 11時
