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──そうだ。思い出した。
全て、すべて。
「私は、偽物」
そう、私は本物じゃない。
駒崎 Aと言う偽物。
今までの生きてきた過去も、記憶も、全部。
このまま生きていていいのだろうか。
否、本物に譲らなければならない。
でも離したくない。
「A、そんな顔しないでください。例え偽物でも、今の貴方はあなたの物です」
ドストエフスキーはAの横を通り過ぎて行く。その通りだ、私は悪くない。いいんだこれで。
「……本当にいいのかい?」
太宰が問う。Aは一瞬たじろいだが、何を今更、と自分に言い聞かせた。
「今知ったところで、何も変わらないじゃないですか……」
「そうかい?Aちゃんはもう無知ではない。まあこの後を決めるのは君だけどね」
「そんなの、」
わかってる。だから自分を正当化しないと、この罪悪感に身が焼かれそうだった。
他人の身体を支配している己に。
それなら。いっそ────
「Aちゃんッ……!」
地下水路によく響く声が聞こえた。
はっ、と振り返れば敦が虎化した足のままそこに居た。後から遅れて探偵社の面々が姿を見せる。
「あんなので僕らを留まらせようなんて、舐められた物だね」
「予想以上に早かったですね。流石は探偵社きっての名探偵」
露西亜帽を揺らしながら、ドストエフスキーは喉を鳴らす。
「時間稼ぎには、丁度良かった」
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小雨(プロフ) - 姫歌さん» 嬉しいお言葉ありがとうございます。少しでも面白いものを書けるように頑張ります! (2019年1月25日 20時) (レス) id: 0248fe37a6 (このIDを非表示/違反報告)
姫歌(プロフ) - 迚綺麗な文章体ですね。更新頑張ってください。 (2019年1月25日 19時) (レス) id: d8a4d97043 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小雨 | 作成日時:2019年1月16日 21時