47話 ページ47
.
西谷が何かしたいと言うので対人パスを行っていた。
すると、ダダダダダダと足音が聞こえて、若葉の手元にあったボールをパシッと掴んで止めた。
足音が近くなったかと思えば、近くの出入口から音駒が一斉に姿を現した。
珍しく孤爪も一緒だ。
「若葉!!夜久に泣かされたって聞いたけど大丈夫か!?」
「大丈夫…?」
黒尾のすごい剣幕に若葉も対人パスをしていた西谷も背を反らした。
そして夜久は黒尾にヘッドロックされてもがいている。
『あぁ、大丈夫デス…』
「なんで引いてんの!?まあ、大丈夫なら良かったけど、夜久は許さん」
「オイ!!首絞まってっから!!」
バシバシと黒尾の腕を叩いたことでようやく腕を離された夜久は音駒軍団からじっと見られる。
夜久はバツが悪そうに頭の後ろに手を置いた。
「俺は、その…若葉は強いから、皆アドバイスしてほしいんだって言ったんだよ。そしたら」
「夜久くんが牛島さんの初めてだったんだな、これが」
「スガくん、話がややこしくなるから黙って」
「若葉の初めて、だと…?夜久が…?」
「ほら見ろ」
「確かに牛島さんは初めてだって言ってたな」
「チョット!?澤村くんまで!?」
話が盛りに盛り上がって夜久が多方向から攻撃を受けているのを見ながら、若葉はササササと後ろに下がった。
そのついでに西谷と孤爪に目を合わせて避難させる。
「…若葉、本当に大丈夫?」
『取り乱しちゃっただけだよ。大丈夫』
「若葉が元気になったんなら良かったぜ!!」
『元気だよ。またサーブ打てるくらいにはね』
孤爪はきっと負い目を感じていたのだろう。
最終的にマネージャーに引き入れたのは孤爪だ。
自分がマネージャーをしてほしいと言わなかったら、きっと若葉は部活に入っていない。
そのせいで苦しんでいたら流石の孤爪でも申し訳なさを感じる。
でも、どうやら若葉の顔を見る限りは大丈夫そうだ。
若葉は笑ったまま、孤爪に言った。
『今度トス上げてよ。私、スパイク打ちたい』
孤爪は目を丸くした。
西谷がそれに「じゃあ俺は拾う!」なんて軽く言っているけど、孤爪はその言葉の重みを知っている。
二年前のあの日、若葉は立ち止まってしまった。
兄を追いかけようと、今まで糸が解れても粘ってきた。
だけど、あの日を境にプツンと切れてしまった糸。
もう追いかける気力もなくなってしまった。
そして今、また糸が少し繋がった。
──また憧れを追いかけられる気がした。
1149人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
早夜(プロフ) - LUNAさん» コメントありがとうございます!!楽しんでいただけて嬉しいです。今まさに公開致しました。パスワードなしでご覧いただけます。お待たせしてしまい申し訳ありません。ぜひ、続編も楽しんで読んでいただければ幸いです!! (2月26日 23時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
LUNA - こんばんは!!初コメ失礼します!めちゃくちゃ楽しく読ませて頂きました!!続編も気になっているのですが数話公開されたらパスワードがなくても読むことが出来ますか?続編も気になるのでよろしくお願いします!! (2月26日 23時) (レス) id: b20802aba1 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - アマアマハチミツさん» コメントありがとうございます!まだ1話しか書けておらず、数話まとめての公開にしようと思っていたのですが…1話でもいいよ〜と言っていただけるのであれば公開させていただきます。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - ミカサさん» 続編公開しますよ!それまでお待ちください! (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
早夜(プロフ) - いくら丸さん» コメントありがとうございます。楽しく読んでいただけて嬉しいです。続編は公開致しますので少々お待ちくださいませ。 (2月26日 22時) (レス) id: f5ec9a9fb0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:早夜 | 作成日時:2023年12月12日 0時